1 微生物の世界
[質問]
「顕微鏡の発明は、科学の発展にどんな貢献をしたのですか。また、細菌も含めてすべての生物体は細胞から構成されているといいますが、この小さな細胞は、どのようにして発見されたのですか」
ウイルスを知る前段階として、まず微生物の世界をのぞいて見ましょう。16世紀末に顕微鏡が発明され、肉眼では見たこともない微生物の世界の幕が開かれて、科学者の眼が微生物や細胞に向けられました。
(1)顕微鏡の発明
15世紀までは、生物学や医学の研究が肉眼で見える範囲だけしかできなかったのです。1590年にオランダの眼鏡職人のヤンセン父子が2枚のレンズを組み合わせた顕微鏡を発明し、顕微鏡によって、肉眼では見ることができない微生物の世界があることが分かり研究の視野が広がりました。
当初の顕微鏡は、あまり倍率が高くなかったのですが、この微細な顕微鏡下の世界に関心をもつ研究者が多数現れ、生物の微細な構造や微生物が観察されました。
イギリスの物理学者で「弾性体のひずみと応力」の法則を発見したロバート・フックは、1665年に自作の集光レンズがついた顕微鏡(図1)によって、コルクやシダの茎などの生物を観察しました。これをスケッチしたものを[ミクログラフィア]という図鑑にして出版し、コルクの切片が、植物は小さな小部屋の集まりであることを述べて、Cellと名づけられ、これが最初の細胞の発見になりました。
彼の図鑑に刺激されて、多くの顕微鏡学派と呼ばれる学者たちが顕微鏡によって様々な微細生物を観察して発表しました。
1677年には、オランダでレンズ研磨技師をしていたレーウェンフークは、独学で博物学を学び、独自の顕微鏡を用いて動物の精子や湖沼などの極めて小さい様々な生物を観察し、原生動物などを発見しました。
これらの研究発表から、世界の多くの人々が自然界のいたるところに、肉眼では見えない微生物の世界があることを知り、そこには沢山の微生物がいることに驚かされるとともに、微細な生物世界への好奇心が高まりました。