第2章 もち小麦は食べやすい
秘密はたんぱく質とデンプン
繰り返しになりますが、小麦特有のたんぱく質とモチ性デンプンを含むということが、もち小麦の特徴です。まず、小麦のたんぱく質についてです。小麦の代表的な加工品といえば、パン、麺類、パスタですが、他の穀物ではそれらを簡単には作ることはできません。理由は、小麦たんぱく質の性質にあります。
パンに水を加えて練るとドウ(麺帯)を形成します。パンの場合は、ドウの網目構造をイーストの発酵ガスで膨張させ焼き上げたものです。中世ヨーロッパでは、キリスト教の布教が、パン・ワインの普及に大きく関係しており、パンとワインが、キリスト教にとってなにかはご存じのところです。当時の教会付きのパン職人の身分は、高い地位にありました。
さて、日本の蕎麦の話に移ります。代表的な二八蕎麦は蕎麦粉に2割小麦粉を加えてドウ(麺帯)を形成させたもので、ドウは“つなぎ”の役割を果たしています。つまり、麺類、パスタは小麦たんぱく質の“つなぎ”効果を利用した食べ物なのです。
ここで小麦の主成分たんぱく質とデンプンのはなしです。グルテン形成たんぱく質は、グルテニンとグリアジンの2つのたんぱく質から構成されており、混捏(練る)することによって網目状構造をつくります。その状態がドウ(麺帯)です。グルテニンは、パスタ、麺類の弾力性に関係し、グリアジンは、粘り気に関係し、グルテニンは、弾力性に関係します。
次に、もち小麦のモチ性デンプンについてです。デンプンに水を加えて加熱すると、デンプンは糊化します。モチ性の場合、粘性の高いアミロペクチンを100%含むため粘り気も最高です。それがお餅です。モチ性デンプンをもつイネ科作物は、米、粟、大麦をはじめ、9種類あります。そのうちグルテン形成たんぱく質とモチ性デンプンを兼ね備えるのは、もち小麦です。
正確に申しますと、ライ麦や大麦もグルテン形成たんぱく質を含んでいますが、少量のため、それだけではドウを形成することはできません。もち小麦は、たんぱく質とモチ性デンプンとの2つの性質をもちあわせていることにより、食べやすく、食品の新たな可能性を広げてくれています。
もち小麦の特長を活かした商品開発の方向はふたつあり、ひとつは、もち小麦100%の食品を開発する方向、もうひとつは、パンなど現状の小麦製品へブレンドする方向です。ブレンドにより、ソフトな食感をもった新食感食品を開発できます。