カッコウの鳴き声(2020年5月)
「カッコウ。カッコウ……」
5月27日の早朝。ようやく待望のカッコウの鳴き声がきこえた。例年なら、5月の中旬、遅くとも22日頃までには鳴き声をきくのだが、今年はやたらに遅かった。他の地区では、もっと早くから鳴き声をきいているよ、という声もあったが、僕の住んでいる山奥は寒いからなのか、なかなか、きくことができなかった。
今年は冬場3月くらいまでは、過去に例がないほどの暖冬で積雪も少なく、春からの畑仕事が急がされると思っていた。ところが4月に入ってからは寒い日が続き、ぐずつく天気も多くて、春の便りは急に失速し、結局、桜の開花も去年より遅くなってしまった。
昔から、カッコウが鳴きだしたら、畑になにを蒔いてもよい時期だといわれている。これは、単なる迷信ではなく、昔の人が長年の経験を経て自然から教えられた知恵であろうし、積算温度と日照量とをカッコウの鳴きはじめる時期と照らしあわせれば、おそらく科学的な根拠もあるものと思われる。
我が家では、例年だと5月24日前後に小豆とスイートコーンを蒔くのだが、天気も悪くてカッコウも鳴かず、どうしようかと気をもんでいた。後の作業もつっかえてくるので、とうとう我慢できず、スイートコーンだけは無理矢理24日に蒔いてしまった。
この原稿を書いている時点(27日)では、まだ小豆は蒔いていないが、畑の準備はできているし、今朝、カッコウの鳴き声もきいたので、ようやく安心して種蒔きをすることができそうだ。
カッコウの鳴き声は、他の鳥の鳴き声に比べるとやや大きく、山林や畑に澄き通った声で響いてきて、とても心地よい。長年、畑仕事をしながらこの時期にカッコウの鳴き声をきくと、本当に「もう大丈夫だよ~! 小豆蒔け~!」と言っているようにきこえてきて不思議な感覚だ。奇しくも、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言解除の時期とカッコウの鳴き声が重なり「自粛もそろそろ緩めていっていいんでないかい」ともきこえてきた。
不謹慎に聞こえるかもしれないが、今回の全国一律の自粛対応にはいまいち納得していない。人口の多い都市部に限って自粛するならともかく、こんな小さな田舎町まで、まるで金太郎飴のように施策を統一することは本当に正しかったのだろうか。確かに、なにか起こってからでは遅いから充分すぎる対応をする、というのも理解できないわけではないが。
なにはともあれ、宣言も解除されたしカッコウも鳴いた。明日へ向かって笑顔で歩きだそう!