【前回の記事を読む】「人間ってすごいなぁ」節分の日がズレる現象に感慨を抱いたワケ

第2章 農業・狩猟

農業者ポリシー(2008年7月)

先日、農業研修で知しり内うち町ちょうまで行ってきた。知内の特産品として全国的に名高い「ニラ」生産者と、最近話題を集めている道南のおいしい米として評判の「ふっくりんこ」生産者を、それぞれ訪ねてきた。両者とも、明るくバイタリティーにあふれ、やる気がみなぎっていた。長年の苦労と努力が功を奏して、今の成功となっていることを話されていた。

そして、ニラにしてもふっくりんこにしても、俗にいう「ブランド」として確立していて、産地として最上級の品質のものを生産することを第一に、品質の悪いものは市場に出さず惜しまないで徹底的に廃棄しているという。そうすることにより、他産地のものより市場で高く評価され単価も上がり、結果的に経営にはプラスとなって儲かっているのだ。

僕は今までにも研修などで、あちこちのいわゆる優良経営といわれる農業者のところを見させてもらい話を聞かせていただいた。今回もそうであったが、今の時代の優良経営として、農協や普及センターが紹介する農業者にはいずれにも共通点があるように思う。一言でいえば「品質重視」という点で共通しているようなのだ。

諸外国からの安い輸入農産物が増大した近代、かつての戦後の食糧難の時代は幻と化し、飽食の時代となった。そのため、昔のような「収量重視」の農業をやっていても、所詮は国土の小さい島国日本。広大な農地を耕すアメリカやオーストラリアなどに比べたら、月とスッポンどころの比ではないだろう。

だから、生き残りをかけて努力をして、今の時代に脚光を浴びている農業者が、前述した「品質重視」の人たちなんだと思う。農業のスタイルは個々の自由であり、否定するつもりはさらさらない。

しかしどうやら、この「品質重視」の農業時代はこの先長くないように感じる。先見の明がある人たちは何年も前から警告してきたことがいよいよ現実化しはじめたからだ。いわゆる「食糧難の時代」の再来である。

最近のすさまじいまでの格の高騰、今まで農産物を輸出してきた国々が輸出禁止措置を続々と打ちだしている現状、原油価格の高騰にも歯止めがかからず国内生産者の生産コストは上がる一方である。これだけの切羽詰まった状況にあるにもかかわらず、国民の大半はまだ飽食の宴に興じてはいないだろうか?