二
続けて、「今どきの若い方なのに、名前の最後に『子』の字がつくのも、古風でいいです」と言った。
「このごろは、『子』の入った名前のお嬢さんをとんと見掛けません。親御さんが嫌うのでしょうかねえ?」
「そうですね。円香とか陽菜とか、絵里歌とか」と応じた。
最近はキラキラネームが大流行り。
「今鹿」と書いて「なうしか」、「希星」で「きらら」、「七音」で「どれみ」。これは女の子の名前。男の子だと、「黄熊」で「ぷう」、「皇帝」が「しーざー」、「本気」で「まじ」といった具合だ。新聞に載っていたけれども、よく考えつくものだわね。本当にこんな名前の子供がいるのかしら、と疑ってしまう。漢字だけを見ると、何て読めばいいのか分からない。
先日、テレビのスポーツ番組で、ある競技の選手の名前に「童夢」「緑夢」という名前があった。「童夢」が「どうむ」というのは分かるけれども、「緑夢」の読み方には参った。「ぐりむ」だって。「みどり」を英語読みにしてグリーンの「ぐり」っていうわけね。ちょっと、ついていけないわ。学校の先生泣かせだよなぁ。
気温三十度を超える、うだるような午後。さっきのニュースでは、この夏一番の暑さだという。おでこの汗をぬぐう。冷たい缶コーヒーとオレンジジュースをお土産に持ってきた。コンビニの袋から取り出して、テーブルの上に置いた。
「冷たいものでもどうぞ」
「ありがたいことです」と、カメさんが軽くお辞儀をした。
「では、コーヒーをいただきます」
プルタブをつまんで開けようとするが、手が震えてなかなかうまくいかないようだ。
「あっ、わたしが開けます」
手を伸ばしかけると、カメさんは
「大丈夫ですよ。自分でやりますから」と制して断った。
無事に開けることができて、口をつけたご老人。
「ああ、おいしい。生き返った心地です」と、にこにこしている。