「ケアタイマ試作プログラム」

左沢ははやる気持ちを抑えながらフォルダを開いた。中から試作プログラムの設計書とプログラム本体が出てきた。設計書は左沢が作成したものだ。フォルダへの登録日が九月二十八日になっている。左沢は、確かにこの日に、周平に設計書をインターネットで送り届けている。プログラムは、周平がこの設計書を見ながら作ったものだ。

最終更新日は十月十二日になっている。十二日といえば自殺する前日だ。周平は福島行きに合わせて試作プログラムを完成させたのだろうか。だとすれば、福島行きは以前から計画していたものと考えられ、衝動的に思い立ったものではないことになる。

プログラム作成に必要な日数は十六日と見積もっていた。打ち合わせでは左沢がアラスカから帰る二十日までに完成させればいいことにしていたから、日程的には余裕があったはずだ。それを十二日までに完成させたのなら、周平は、福島行きまでに完成させようと、設計書を受け取ってすぐに作成に取り掛かったに違いない。ただ、完成のメールを左沢に送ったとはいえ、プログラムは未完なところも残り、福島から戻って残りを作ろうと目論んでいたことも考えられる。

「完成状況を見れば、だいたいの見当はつくな」

設計書をもらって、すぐに十二日の完成を目指したかどうかだ。左沢はスマホとパソコンをケーブルで接続し、フォルダのプログラムのダウンロードを指示した。渦巻きのアニメが現れ、しばらくして消えた。試作プログラムをスマホに送り込むダウンロードが完了したのだ。

続いて、スマホの開始ボタンを押すとすぐに介護計画の画面が現れた。上部に介護を受ける人の名前と現在時刻、下部に計画された介護サービスの一覧が表示されている。画面に入りきらない介護サービスは、指を画面に当てて移動させるスワイプと呼ばれる操作で、上下に移動した。一覧表示された介護サービスのうち、「食事介助」を軽く叩くと、実績を入れる画面に変わった。

「よく食べた」「少し残した」「少し食べた」「まったく食べなかった」の文言が並べて表示されている。「よく食べた」を軽く叩くと元の一覧画面に戻り、食事介助の文字が半透明になった。介助が実施済みという意味だ。

「きっちり作っているな」