俳句・短歌 四季 2022.07.14 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第114回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 樹の下で砂浴びしてる雀見る 深く埋うずもれ直ぐ飛び去った 曇り空そら夕暮れ時どきに霧が立ち 朱色に染そまる生きる空間 窓外 そうがいの木立の青葉見ていると 納涼開き勇気湧き出す
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『新西行物語』 【第10回】 福田 玲子 崇徳天皇の母・待賢門院璋子。母子といえども、たやすくは会えない。彼を見て、なかなか会えない帝を思い出していたのかもしれない 佐藤家では、義清(のりきよ)を主家の閑院流(かんいんりゅう)藤原氏である徳大寺家(とくだいじけ)の家人(けにん)として仕えさせて、朝廷に仕官するのに必要な礼儀作法や教養を身につけさせようとしたのである。まだ徳大寺家(とくだいじけ)に仕え始めたばかりのある日、義清(のりきよ)は左大臣徳大寺(とくだいじ)実能(さねよし)に呼ばれた。「義清(のりきよ)、これを待賢門院(たいけんもんいん)に届けてくれ」…