俳句・短歌 四季 2022.07.14 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第114回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 樹の下で砂浴びしてる雀見る 深く埋うずもれ直ぐ飛び去った 曇り空そら夕暮れ時どきに霧が立ち 朱色に染そまる生きる空間 窓外 そうがいの木立の青葉見ていると 納涼開き勇気湧き出す
小説 『「本当の自分」殺人事件[注目連載ピックアップ]』 【第10回】 水木 三甫 ホテルの入口、ためらいは一瞬で、後はただ身を任せていれば良かった。夫と同じことをしているだけだ。 【前回の記事を読む】硬直する体に構わず、若い桃のような頬に唇を当てる。首筋からさらに下へ、新鮮な匂い。しがみついていた彼女の腕の力は抜け…光彦から急な出張が入って帰れないという連絡が入った。淳美は光彦があかねと会うことを確信した。光彦のために自分は尽くしてきたつもりだ。それを裏切ったのは光彦だ。あかねの存在も淳美にとっては大きなストレスになっていた。いつもあかねに操られている自分にうんざりしてい…
小説 『愛[注目連載ピックアップ]』 【第4回】 高見 純代 震災のあとの神戸は恐ろしく大変だった。私はおにぎりを作ったり、泣いてる子どもの面倒をみたり、何でもした 【前回の記事を読む】「人間しか自殺はしないわ。犬や猫は自殺しないもの。自殺って、人間を知るヒントになると思うわ」そう言うと、彼は私から目をそらし、天井を見た。何かをこらえているような固い雰囲気だった。私は本を閉じてバッグにしまった。「僕は今、CNNの仕事で、神戸を取材しているんだ。三年前の阪神・淡路大震災から、一体どうやって、ここまで復興したのかって、世界は日本に注目している。君も震災で被害に遭…