「貴族世界、又は華族世界で売り捌けば一生遊んで暮らしてもお釣りの来る価値だらけたかね?」
「? こいつを拾ったのは五日前で、……何が言いたい」
「少々酷だが、この財宝は」
浩輔の手が、写真に伸びた。
「……見た事ある。……これも、……これも―!!」
「であろうな。それらは全て海川家の屋敷から盗み出されたものだ」
「ッッ!! じゃぁ!」
桐弥はソファに背を委ね、膝の上で手を組んだ。
「発見された死体は全て、海川家に仕える使用人及び当主とその親族だ」
「……あ……」
「死体の写真まで見せる訳にはいかんが、関係者がいるなら話は早い、死体検分に付き合ってほしい」
「待てよ。浩輔は」
「それに、だ。顔の分別もつかないほど無残な殺され方をしていてな。そんな悪人がただ“財宝はどこだ”、だけを語るとも思えんのだよ」
さっきの、喰わせた魂の声の事を言っているのだろう。納得のいかない彼女は、もう一度黒い布を引き下げて“喰った”魂の声を聞く。
「おい。お前らが殺したのか」
“財宝は簡単に手に入ったんだ……”
“兄貴ぃ……血生臭い……早くズラかりましょうぜ……”
「仮にこいつらが殺したのだとしたら、俺の右腕はもっと力を感じている筈だ。都合のいいタイミングで家宝をかっぱらった、ただのチンピラだ、こいつらは」
「だが、魂は嘘をつかない。ならば」と桐弥は言い、一枚の書類を机の上に広げた。
「これは、財宝の保管してあった階の見取り図だ。この多数の×印は、死体の発見された場所」
「……財宝の保管場所は……地下を含めて七部屋か」
「そう、そして、この×印を通らなければ財宝のある部屋には近づけないのだよ。つまり、その魂は死体を見ていなければおかしい。正直に言いたまえ」
“財宝を盗もうとしたら見つかったから……面倒だから殺した……でも全員なんて殺してない……”