再会

待ち合わせ場所である梅田駅前のビルに着いたのは約束時間の15分前だった。一階の書店で10分程雑誌の立ち読みをするが、文字が頭に入ってこない。

5分前に指定したエレベーター付近に移動すると何となく彼に似た細見で小柄な男性がリュックを背負って立っていた。ちょっと似ているけれど違うはず。彼が社会人になった時はいつもスーツ姿できちんとしていた。

高層エレベーター乗り場まで行くが誰もいない。もしかしてあの人なのか、スマホをいじって遊び人風のチャラい兄ちゃんみたいで、とても60代のロマンスグレーには見えない。ソワソワと落ち着きがなく、本当にこの人が彼なら会いたくないな、このまま帰ろうかな、と思っているとメールが来た。

「中階層のエレベーターの入り口にいます。緑色のジャンパーを着ています。」

ああ、やっぱりと、少し残念な気持ちになった。恐る恐る近づいて行くと私を見て、「やあ」と言ったように見えた。

「タカナシです」と言うと、「知っているよ」と笑顔で返されてしまった。待ち合わせをしているのは私とだから、わざわざ改めて名乗る必要はないよ、という含みのような微笑みだった。ビル高層階の和食レストランでランチを食べることにした。メニューはお手頃ランチセットにした。

アルコールは飲まないと決めていた。ところが彼が聞いてきた。

「ビールは?」

「お車じゃないの」

「違う」

「じゃあ、飲む」という自分の意志の弱さを情けなく感じた。

私は、昨日の妙なメールのことを聞いてみた。

彼は昨日、仕事で京都のホテルに一泊した。宿泊したホテルの大浴場で見知らぬお爺さんが意識不明の状態で倒れているのを発見した。心肺蘇生を試みたが助けられなかったということだった。

説明がなければ、変なメールだと思う。説明が下手なのか、面倒なのか、こんな人だっただろうかと37年の経と過きを感じざるを得なかった。私たちは他愛もない話をしながら、お互いの近況を報告し合った。