着いた所は川幅が一段と広くなっていて、大きな集落があり、市が立っていた。ここにも右奥の方、少し川から離れた所に濠に囲まれた集落があり、竪穴式住居が建てられている。川沿いに作られた市は、木の柱に板でさしかけをしただけの簡単なものや、ござを敷いただけの店などいろいろだが、店主の気合いの程が分かるような、しっかりとした作りの店もある。河川敷には砂浜が広がり、大勢の人がせわしなく右へ左へと働いている。河川敷の一番広くなった所に舟着き場が見える。
はるな達が今いる所には合歓の大木が一本だけ生えている。ほかに大きな木はなく、ハマユウのような低木ばかりが茂っている。河原へと降りる道にはピンクの昼顔が生い茂っている。昼顔に沿って、まず、河川敷へと下りた。広い河原に整備された舟着き場のすぐ近くに白い大きな布を壁のように巡らした所がある。そちらから鐘の音が聞こえる。
その付近にいる大勢の人々はほぼ全員正装をしている。明らかに竪穴式住居にいた人たちとは違う服を着ている。美しく彩色された生地で仕上げた服を重ね着にして、女性はゆったりとしたロングスカートをはき、髪を耳の横で、あるいは頭の上で束ねている。朱で彩られた耳飾りや腕輪を付けている。何人かは丸いガラスビーズと玉の勾玉を組み合わせた首飾りで着飾っている。
男性はシャツとズボンをはき、袖口やズボンの裾をリボンで結わえている。男性もガラスや玉、彩色された陶器などでできた、耳飾りや首飾りを身に付けている。玉をふんだんに使っている人が二、三人いる。多分彼らは権力者なのだろう。周りを押さえつけるような、近寄りがたいオーラを発している。
「えらくふんぞり返ったやつ」
とゲンタが批判めいたことを言った。
「自分のやっていることを考えてから言ってね」
と、口にこそ出さないが、はるなは言いたかった。