【前回の記事を読む】タイムマシーンで1989年へ「思い出ツアー」の始まり

タイムスリップ先は一九八九年

アイマスクをはずした参加者から声が上がる。

「おー!」

「コレは!」

「そう言えば三階建てやったなあ」

参加者の前に現れたのは学校の校舎だった。古びた鉄筋の三階建て。よく見ると壁に汚れが目立つ。

「こんな感じやったなあ」

「六年の教室は三階やったっけ?」

「そうそう。窓から外をよう見てた気がする」

それぞれが校舎の外観を眺めて感想を述べる。

「ホンマに一九八九年に戻ってきたんやな」

「そうや。俺らの学校はもう壊されてなくなってしもたからなあ」

参加者の小学校は人口の減少から近くの学校と統合され廃校となった。彼らが卒業してからすぐのことだ。その後、しばらく校舎は放置されていたが、二十一世紀に入って大阪市が民間に売却。今は巨大なホームセンターが堂々とそびえている。

「皆さん、一九八九年にやってきましたよ!」

理之介が宣言して参加者を校舎の中へと誘う。向かったのは三階にある教室。

「六年二組」の札がかかっている。中には古い机と椅子が人数分用意され、黒板にはチョークで小学校の名前と「祝! 卒業三十年」の文字が書かれていた。

「わあ、感激!」

「ホンマに小学生に戻った気分やな」

「楽しい!」

参加者から興奮の声が漏れる。

「皆さん、席につかはりましたか? では、同窓会を開会させていただきます!」

理之介が興奮する参加者を落ち着かせるように宣言した。ここからは用意していた色んな趣向で参加者を楽しませる。昼食は給食スタイル。

「こんなトレイやったなあ」

「意外と量は少なかったんや」

学校からの帰宅時によく立ち寄ったパン屋の名物カレーパンも出した。

「コレ、よう食べた」

「この味、この味。ちょっとピリ辛やった」

そこからは参加者たちの会話に委ねる。時間を見計らって、理之介が「では、ここで特別ゲストの登場です!」場を盛り上げる。

涼平が担任の先生を連れてくる! サプライズ登場だ! 当時、定年間近だった男性教諭。小学生から見ればかなりの年寄りに見え、皆は陰で「じいちゃん」と呼んでいた。