先生は本物!?
「お忘れ物のないように!」
そう声をかける涼平に幹事の男性が近づいてきた。
「塚田さん、楽しかったですわ。正直、最初お願いした時はちょっとどうかなあってところはあったんですけど」
「いや、まあ、皆さんそうですから」
「しかし、ようココを見つけはりましたね」
「見つけた?」
涼平はその表現は禁句ですよ……という思いを苦笑いに込める。
「先生の登場もビックリしましたよ。本人かと思いました。ようあれだけ似てる人を見つけてきはりましたね。さすがプロ!」
「いやいや」
涼平はさらに眉毛を下げて困惑の表情だ。
「ちょっと、幹事さん。何を言うてんねん。あれはホンマの先生やないか。我々はちゃんと一九八九年にタイムスリップしてきたんやから。ね?」
参加者の一人が笑いながら注意する。
「そうやった。ごめん、ごめん」
幹事も笑顔で謝罪した。涼平は理之介と共に参加者を小学校の外へと誘導する。そこで再びアイマスク着用をお願いした。
「いやあ、これはもうええんちゃいます?」
参加者からそんな声が出たが
「すいません。一応、決まりのシステムになっておりますんで」涼平が説明する。
「そうか。この学校がどこにあるかは内緒なんですね?」
「ええ、まあ」
「せっかくのタイムマシーンでの旅行というのが台無しやからね」
幹事が本質を突いた感想を述べる。
「それはそうや。ほな、またアイマスクしよう」
「はいはい」
「分かりました」
参加者は納得してくれた。小学校の建物の前で記念写真を撮った後、来た時と同様に全員がアイマスクを着けた。そんな参加者を誘導してバスに乗せる。理之介の合図でアイマスクを取った参加者に対し、まとめの挨拶だ。
「では、これから二〇一九年に戻りたいと思います。それでは」
「また、アレですか?」
またアレと言われるとやりにくいが理之介は段取り通りにおこなう。
「いきますよ! 寿限無寿限無五劫の擦り切れ……」
最後に「長助!」と大きく叫ぶ。
「では、令和元年へ戻ります!」