僕はいつも遠くから中澤さんを探した。何度も目が合っては反らしていた。たったそれだけのことが幸せだった。

そんな風に過ごし、ついにクラブ活動も最後を迎えることとなった。

最後のクラブ活動が始まる前に太鼓クラブの四、五年生が集められた。

「今日はついに六年生にとって最後のクラブ活動になります。そこで、みなさんから六年生にお別れの言葉を言ってもらおうと思います。この中で代表を三人選んで一人ずつ感謝の言葉を言ってもらおうと思います。立候補してくれる人はいませんか?」

「はい」

僕は迷わずに手を上げた。

初めて中澤さんにほうきを貸した時のように何も見えなかった。あの時の僕は中澤さんに想いを伝えるチャンスだと思ったのだろう。周囲の目は意外な空気に包まれていたが、そんなことはどうでも良かった。

「素晴らしい。じゃあ、横関さん。他はいないのですか?」

僕以外、手を上げる人はいなかった。先生がなんとか説得をして他の二人が渋々手を上げた。

最後のクラブ活動は全員が円になってお菓子を食べながら雑談をして過ごした。僕は中澤さんからは離れた場所だった。それでも目が合って嬉しかった。