「いやぁ~ん、栗栖ちゃぁんっ」
豊満な胸を栗栖に密着させ、媚びる総帥の部下。だが栗栖は、
「無駄な贅肉に興味はありません。蘭さんもお座りください」
「んもぉう、久々に会えたのにぃ。つーれーなーいーぃ」
「お座りください」
渋々座る、蘭と呼ばれた軍曹にも紅茶が用意された。
「俺の噂話でもしていたのかね、葬儀人」
「あーあ、お前のせいでまーた平和から遠ざかるじゃねぇか」
「つれない事を言う」
「? 浩輔、どうした。さっきまでの威勢はどこにいったよ」
地位を明かした青年が室内にゆっくりと入り、自然な動きでソファに座るや否や、浩輔の体の震えが目に見えて分かる。
「こ、国王軍中央司令部総帥……っ、国王の側近じゃねぇかっ!なんでそんな偉い御方がこんなトコにッ!」
「ほう、彼は新人かね?バイトでも雇ったか」
新たに見る顔に桐弥が興味を示してみせる。
「ちげーよ。成り行き上で拾った、ただの雑用だ。栗栖、紅茶お代わり」
「今、準備しております。暫しお待ちください」
ペコリと頭を下げる。と、所長の彼女も椅子から立ち上がってソファに向かう。青年の正面に座った頃には紅茶も注がれ、一口飲んでから声を出した。
「で?」
「昨夜の一件、見事だったらしいな。遺体はまだ保存してあるが、君からの報告次第で変わる」
「ただのチンピラだ。吸収した腕も痛まねーし、金銀財宝への執着が強いぐらいのもんだ」
「見せてくれるかね?」
所長―少女がチラリと浩輔を見やると、その動きに総帥・桐弥が眉を曲げた。
「彼は知らないのかね?」
「お前が来るまで、ここの葬儀屋の存在そのものについて談義してたところだ」
「名前は?」
「海川浩輔。おら、自分で自己紹介ぐらいしやがれ」
緊張でもしているのか、桐弥の視線を受けるだけで体が張り詰めているようだ。
「き、貴族世界の海川家当主の息子、海川浩輔、ですっ、しゅ、趣味は、えっと!」
「声、裏返ってんぞ。というより、趣味とかいるか、普通?」
「だっ、滅多にお会いできない上、物凄い御方だぞ、てめーこそ態度を改めろ!」
「俺はいいんだよ。特殊な関係だからな」
「特殊?」
そんな浩輔の自己紹介を聞いて、総帥・桐弥が問いかける。