紀香は省吾に謝った。だが、省吾はかえってそれでいいと思っていたので、紀香を責めたりはしなかった。その時、省吾に電話がかかってきた。
「どうした?」
若宮からだった。
「あのさ、冬彦からマルチアパートの住所聞いてさ、携帯エアリーを借りて俺の会社で試したらさ、事務所ん中に大木のこと知ってるやつがいて……」
「えっ? それで?」
「そいつが大木の持ちものをもらったことがあるって言うんだ」
「そうか、ありがとう。今から行くよ!」
省吾は紀香と一緒に若宮の会社へ向かった。他の刑事も行きたがった。結局四人で出かけることにした。
会社の中へ入ったのは省吾と紀香。そこで若宮から例の大木の持ちものを受け取り、外へ出た。持ちものは大木の使い古しのバッグだった。
「今からエアリーに空気を読ませて大木の居所をドッグで探しだしましょう!」
省吾は張り切ってみんなに言ったが、他の刑事は大木が外国にいるという話も片隅にあったのでほとんどドッグは動かないものだと思っていた。しかし、
「動いたぞ!」
ドッグは空を飛び、それを車で追いかけた。車にはパソコンが積んであり、エアリーとつなげて画面を見ながら上空のドッグを追った。
「おいおい、海の方に行くぞ!」
「何だ? 海の上まで飛んでるじゃないか!」
と、その時……ドッグはジャッポーンと沈んでしまった。
「何だよ。インチキじゃねえか!」
「やっぱり海外か。期待して損したよ!」
だが、パソコンの画面はそのまま止まり、そのうち点滅し始めた。
「まさか……」
みんなヒヤッとした。
――大木は自殺でもしていたのか?
ボートを用意してもらい、中までカメラを入れて探してみた。
「おーーーい! 見つかったぞーー‼」
一緒に船に乗っていた刑事たちは、大木が引き上げられる姿を目の当たりにした。
「キャーーー‼」
紀香が悲鳴を上げた。他の刑事も恐ろしくて震え上がった。そして、顔と服装、身に着けていたペンダントを見て大木の写真と照らし合わせてみた。
「間違いないな!」
省吾はアパートに戻って幸子からの電話を待った。しかし、電話がなかったので事件の事を考えた。
――大木は自殺ではないかもしれない。他殺か? だとしたら誰が殺したんだろう? それより若宮が言ってた「大木からバッグを受け取ったやつ」とは、もしかしたら受け子だろうか? それより何より若宮も怪しい気がする。なぜパーフェクトの跡地に会社を興したのだろうか? 若宮は大木とつながっているのか?