携帯エアリー

真由は取調室では無言だった。紀香がエアリーを持ちながら取り調べをした。

《恭平君、お願いだから捕まらないで! 逃げて! あなただけは捕まってほしくないの!》

「あなたは誰かをかばっていますね」

「……」

《恭平君、今どこにいるの? 殺人は重罪よ! あなたが一人でやったのよね。私をかばって私の代わりに殺してくれたのよね》

「あなたがかばっている人は男性ですよね」

「……」

真由は首を横に振った。――恭平君? どこかで聞いた名前、うーん。恭平、恭平、あっ! 紀香は気付いた。恭平君て、「崎田恭平」。田中に封筒渡した……まだ捕まってない男だ。

「あなたのかばっている人は受け子やってた人?」

「……」

《違う。かけ子やったけど、結局それもうまくいかなくてドライバー》

「そうなの?」

「えっ?」

思わず紀香は声を出してしまった。そして真由まで。紀香は慌てて省吾のところまで行って崎田恭平のことを話した。そして、その居場所を突き止める方法を相談してみた。

「エアリーの解決ボタンを押してみるか?」

「わかった。やってみる」

部屋に戻り、紀香は省吾と一緒にエアリーを使ってもう一度真由に質問してみた。

「あなたは犯人が誰なのか知ってますね」

「……」

《言えるわけないでしょ。恭平君が殺したなんて》

紀香は解決ボタンを押した。すると、〈恭平君とは崎田恭平です。真由とは両思いです。他のOS関係者から崎田の居場所を聞いた方がいいです〉

「そう。言いたくないなら言わなくてもいいわ」

そして、省吾は他のメンバーに聞いてみた。パーフェクトの田中だ。

「崎田恭平さんを知ってますね」

「うん」

「ドライバーさんですね」

「そうだったかな?」

「それで、今はどこにいるかわかりますか?」

「知らん」

《車でどっか逃げたんだろう?》

そして、解決ボタン。

〈封筒の指紋から崎田の情報はすでに調べ上げてある。その住所を頼りに崎田の臭いや空気があるからそこから採取し、ドッグで探してください〉

「なるほど」

省吾と紀香はその住所のアパートまで辿り着いた。しかし、そこにはもうすでに別の人が住んでおり、部屋の空気も違っている可能性が大きい。省吾は郵便受けを見た。その中に何かしら臭いや空気が残っているかもしれないと、エアリーを近づけてみた。しかし、今の住人の空気のようだったのでがっかりしていた。