【前回の記事を読む】「もうお母さんなんかいない」少年が母を忘れようとしたワケ
二、君の人生お先真っ暗になるよ
同級生のS君より私は、やんちゃ坊主で腕力もあり喧嘩にも強く好奇心旺盛な少年だった。
同じ町内の同級生S君とは大の仲好しで、彼は、頭が良くて何でもはっきりとものを言うタイプ。何故か気心もよく合い互いに認め合う親しい友達だった。
彼の家は、お金持ちで親から色々な物を買って貰え羨ましく思っていた。私の家庭は、母親と離別してから、経済的に貧しくなり、お小遣いも十分に与えられず好きな物も買って貰えなかった。
当時、「冒険王」という少年漫画雑誌が創刊された。S君からいつも借りて読んでいた。小松崎茂氏の劇画が掲載されていて、よくその絵を見て真似てノートに描いて楽しんでいた。
ちょうど、その頃、手塚治虫氏の漫画『新宝島』(新寳島)が刊行された。宝島の地図を見つけた少年が、冒険の旅をするというストーリーで、それに夢中になった。勉強もおろそかとなり、「ボクは、将来、漫画家になりたい」と漫画の絵ばかり書いていた。そして、手塚治虫氏の漫画の本が売り出される都度、欲しかった。欲しくて欲しくてたまらなかった。
そして、近所に喧嘩に強く不良の噂のある2才年上のNとKがいた。二人は、いつも一緒に行動していた。また、近所の子供達を集め、ビー玉や竹馬、輪回し等の遊びを教えてくれる存在だった。私は、いつも誘われて何故か弟みたいに、可愛がってくれるので、よく一緒に遊んでいた。
ある時、彼らに手塚治虫氏の本が好きだと伝えると、その翌日
「棚橋。お前の好きな手塚の本や。わし読んだからお前にやるわ」
と気安くくれた。「お金を払うから」と言っても取ってくれなかった。また、遊ぶ前に、コッペパンや蒸しパンを持ってきては
「腹減ったやろ。これ食べろよ」
とよくくれた。いつも、親切にしてくれて何でも与えてくれるので、私の兄貴みたいな存在に思えていた。