この年、明和三年(1766年)、二月二十九日。堺町の初代尾上菊五郎油製造場より火が出た。火は忽ち春の大風にあおられ、中村座、市村座、操り人形座含めて五座が焼け、火は小伝馬町まで焼け広がった。世にいう、「菊五郎油見世火事」である。当然芝居は休みである。菊之丞の堺町新道の家も焼けた。役者には久しぶりの時間ができた。中村座、市村座とも普請を急いだ。そんな時の話である。「でもできるか? 同じような色が?…
[連載]大江戸弘メ帖 第一編 東錦絵
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小説『大江戸弘メ帖 第一編 東錦絵』【第7回】渋谷 松雄
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小説『大江戸弘メ帖 第一編 東錦絵』【第5回】渋谷 松雄
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小説『大江戸弘メ帖 第一編 東錦絵』【新連載】渋谷 松雄
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