桜町の家での生活にもすぐ慣れた。父の本妻さん、名実共に新しく賢治の母になった人は、城の東にある工町の箪笥職人の娘で、丸髷を結った小柄な人で名前は「ナミさん」といった。この家に嫁いでしばらくは子どもが生まれないことからずいぶん肩身の狭い思いをしたらしい。舅、姑が相次いで亡くなってからは、店の奥を切り盛りしているしっかり者で、職人の娘らしく気取らない明るい女だった。老舗の大店の奥さんだから、ツンとし…
[連載]上海輪舞曲
-
小説『上海輪舞曲』【最終回】中丸 眞治
「ケンちゃんは中学生よ、下品な話はおよし」母がニコニコしていたワケ
-
小説『上海輪舞曲』【第10回】中丸 眞治
旦那に浮気を疑われて布団巻きにされた…置屋での日常的会話
-
小説『上海輪舞曲』【第9回】中丸 眞治
【小説】「女の汗の匂いが立ちこめる」稽古場に向かった青年たちは…
-
小説『上海輪舞曲』【第8回】中丸 眞治
【小説】どうしても花街が見てみたい…中学生が企てた「作戦」とは
-
小説『上海輪舞曲』【第7回】中丸 眞治
「異性と目が合えば顔を赤らめる年頃」の友人を誘い…遊郭の実地見学へ
-
小説『上海輪舞曲』【第6回】中丸 眞治
教師に進路希望を伝えると…「田舎教師に何がわかる」父激怒のワケ
-
小説『上海輪舞曲』【第5回】中丸 眞治
【小説】商家の父から「大学へ行け」発言。想定外な言葉の真意とは…
-
小説『上海輪舞曲』【第4回】中丸 眞治
【小説】男と町を捨てた祖母…幼い子を連れてやって来た花街とは
-
小説『上海輪舞曲』【第3回】中丸 眞治
【小説】着物や帯をまさぐって…芸者置屋の息子の「宝探し」
-
小説『上海輪舞曲』【第2回】中丸 眞治
【小説】激動の戦乱下、普通の出版社だと思い就職した会社は…
-
小説『上海輪舞曲』【新連載】中丸 眞治
【小説】山犬が「人間の首らしいもの」をしゃぶっていた…