もう七、八年、子どもたちの顔を見ていない。九年前、夫が突然倒れて見送って以来だ。私はまだそれほどの年齢ではないし、普通に日常生活は送れている。子どもは二人ともそれぞれに所帯を持って、息子はローンを組んで地方都市に戸建てを買い、娘は都心にマンションを借りて、母親のことは頭の隅にもないようだった。よくテレビで観るような、高齢者が巻き込まれる事件、そんなものに引っかからない自信があった。あれは認知症に…
[連載]泥の中で咲け
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小説『泥の中で咲け』【最終回】松谷 美善
「タダほど高いものはない。」という言葉は本当なのか?
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小説『泥の中で咲け』【第14回】松谷 美善
後輩より給料が低いことに腹を立て…転職した先は「詐欺会社」
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小説『泥の中で咲け』【第13回】松谷 美善
超就職氷河期…新聞販売員をリストラされた男の凄まじい日常
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小説『泥の中で咲け』【第12回】松谷 美善
死に物狂いの脱走劇…逃げ込んだ先の交番で「衝撃の一言」
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小説『泥の中で咲け』【第11回】松谷 美善
複数の女性を監禁する男たち。その目的は「体」ではなく…
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小説『泥の中で咲け』【第10回】松谷 美善
「気がつくべきだった」アプリで知り合った男を信じた結果…
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小説『泥の中で咲け』【第9回】松谷 美善
連れられた先は不審な部屋…危険を察知した少年が、それでも逃げ出せなかったワケ
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小説『泥の中で咲け』【第8回】松谷 美善
唐突なクビ通告。絶望のなか、職も住居も失った少年が電話した相手
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小説『泥の中で咲け』【第7回】松谷 美善
母さんの死。月給6万円でお墓もなく「お骨と一緒に暮らした」
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小説『泥の中で咲け』【第6回】松谷 美善
母さんが死んだ…父が火葬場で言い放った「信じられない一言」
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小説『泥の中で咲け』【第5回】松谷 美善
「母さんが脳梗塞」…十年以上前に離婚した父へ泣きながら電話
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小説『泥の中で咲け』【第4回】松谷 美善
ひきこもりの高校時代…少年の「パラダイス生活」は突如潰える
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小説『泥の中で咲け』【第3回】松谷 美善
貧しい家庭で育った子が「いじめは大人の責任」と断言する理由
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小説『泥の中で咲け』【第2回】松谷 美善
「うんていから落ちた」けがをした息子に対する母の一言に唖然
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小説『泥の中で咲け』【新連載】松谷 美善
【小説】「俺は高校を2か月でやめた」少年が受けた屈辱とは