はじめに
Drainage(ドレナージュ)とは、デンマーク人のEmil Vodder(エミール・ヴォデール)博士が1936年に発表した「体液」に働きかける施術法です。その根拠(原点)を、Hippocrates(ヒポクラテス)の「自然治癒力」に求めました。ドレナージュとは、ヒポクラテスの唱えた「自然治癒力」説を実証するものです。『ドレナージュの力はこんなにスゴイ!』と、人々からいくら思われ、それなりの評価を受けても科学的根拠を提示できなければ信憑性に欠けると世間はとります。成果に導かれますからそれで良しというわけにはいきません。
あるとき、こんな質問を受けました。
「Drainageの機序はなんですか?」
私は、機序という言葉すら知りませんでした。
「そんなにスゴイと言うなら、どうしてもっと浸透し普及しないのですか?」
このようなごもっともな疑義に対して返す言葉もなく、大きな戸惑いを覚えました。医学は、AIだの遺伝子だの飛躍的進展を遂げています。常に不可能を追究しています。答えられないのは私の勉強不足のせい。私がただ知らないだけのことに過ぎません。きっと、専門の研究者がおられ専門書もたくさんあるに違いないと勝手に思い込みました……。
見事にその期待はハズレましたが、諦められませんでした。それほどにDrainageは私を虜にしていました。そんなはずは絶対にない。追究したい思いは、募るばかりです。
Drainageの科学的根拠は何か。どこにあるのか? どうしても知りたい!
探究の旅の始まりです。博士は、先達からたくさんのヒント(知恵)をもらい、medicine naturelleの研究をしているEstrid夫人の助けも借りてドレナージュを編み出しました。旅の手がかりは、博士が示した人名、場所だけです。不安だらけの独り旅です。
「さあ、サトコ行くのです、行きなさい!」
誰とも知らない人々に背中を押されての旅立ちです。いざ、出発!On y va!
原点
一番にヴォデール博士が挙げた名は、ヒポクラテスです。「人間には本来、自然治癒力が備わっている」と提起しました。あなたは、この言葉の重みをどう捉えますか。この「答え」は、まだ完結していないことも知っているでしょうか。ここで、ヒポクラテスの名前を出すとあなたはきっと戸惑うかもしれません。もしかしたら何を今更と、頭から否定されるかもしれません。どうあろうとその名は、2400年の時空を超えて今でも色あせることなく医学の頂点に君臨しています。「医学の父」と尊称されてきたことは事実ですから。
ヴォデール博士は、自然治癒力を促す「術」を編み出し成果を獲得するまでに至らせました。しかし、そのメカニズムの解明は未完のままです。どの辺りまで見えているのかを知りたい、知らなくてはいけない、と思いました。現代医学の真価にも通じるからです。ここに達するまで既に2400年もかかっているのですから、この先どれほどかかるかは気の遠くなりそうな話ではありますが。原点を忘れずにいる限り、必ず「医学の父」・ヒポクラテスの問いに対する「答え」は浮上してくるものと信じます。