これだけの数のユーザーを抱えながら、スポンサーなしでなぜ運営できるのか、膨大なデータを処理するサーバーの管理やメンテナンスはどうしているのか、社員は何人いるのか、そもそも運営しているのは企業なのか、個人のボランティアなのか、といった点について、あれこれ憶測を呼んでいる。

これまで「My Life」運営者には何度も取材の依頼があった。その中には破格の謝礼を伴うものも少なくなかった。だが取材は一度も許可されたことはなく、運営者サイドから内情について情報が漏れることは、一切なかった。現在でも明確なことを知っている者はいない。

それでも、隙あらば人間の意識の中に入り込んで、商品なりサービスなりをすり込もうとする商業主義を色濃く反映するSNSが批判や疑問にさらされる中、「My Life」はユーザーからの信頼を確実に得ていた。

また、原則としてユーザー登録は本名で行い本人確認手続が必要であるが、発信は世界中の不特定多数の人に向けたものと設定されており、プライバシー保護を重んじるよりも、公平性に支えられたオープンさに魅力を感じている人々に広く受け入れられている。さらに、ユーザー視点に立ったちょっとした機能のアップデートが頻繁に行われる点も、人気の理由である。

「Good!(いいね)」ボタンなどの投稿へのリアクション機能はすでに多くのSNSでお馴染みだが、最初に開発したのは「My Life」だ。

最近では、投稿者の追加アクションとして、「Wish You Were Here(あなたがここにいればよかったのに)」というボタンが設定された。例えば、ある人が週末のバーベキューの写真を投稿したとする。投稿者が「ある特定の人」を設定して「Wish You Were Here(「wYwh」と略される)」ボタンを押すと、受け取った人は、次回のお誘いのようなポジティブな印象を受けて、そこからメッセージの交換が始まる、というわけだ。

赤毛の男は、「wYwh」機能追加のフォローアップとして、「My Life」運営の会議で、こう報告した。

「機能追加後、『wYwh』の使用回数は順調に伸びており、このちょっとした新機能はユーザーに好意的に受け入れられているということができる。事前許可のもと、使用例を複数モニタリングしたところ、想定外の傾向も見えてきた。当初の想定とは異なり、特定の人を設定せず、つまり受け手を設定しないで、「wYwh」を押すケースが見られている」

赤毛の男はパソコンの画面にいくつも映し出されているユーザーたちのステイタスの中に、先ほど自分が飲んでいたのと同じビールの瓶を映した画面を見つけた。この投稿も「想定外」なケースの一つだ。男は、「ある考え」の対象になるだろうか、と考えている。