【前回の記事を読む】何が起こるのかは全く未知数…頼りになるのは人間の英知と勇気
旅立
新しく居住できる星が見つかれば、そこにノアの箱舟と同じように動植物を降ろし、アダムとイブのように人間社会を構築できるだけの資材をウラシマは搭載している。
日本にもかぐや姫や浦島太郎のおとぎ話により、宇宙や時空を超える話が伝承されているが、このミッションはこんなおとぎ話とは違い、科学に基づく計画である。夢で終わらせる訳にはいかない。人類の科学の証として、人間が住む新たな地球を人間自らの力で作り出し人類の移住先として成功させたいと主人たちは思っている。
細菌研究者の織田は、「でも我々が持ち込む細菌やウイルスによって、その星の何億年にも亘る自然界の歴史を変えてしまうことは許されるのだろうか」と、疑問を抱く。
医師の本多は「地球上の生命が他の星で生存できるか、生命の環境適応力について実際に自分の目で見てみたい」と、思っていた。
iPS細胞研究者の中本は「もし地球以外の生命に会うことができたら、地球の生命との違いや、遺伝構造を是非この目で見たい」という野心を持っていた。
宇宙を愛してやまない天文学者の星野は「このミッションが成功してたどり着いた星にも生命がいたなら、生命は宇宙で生まれたことを自分が最初に実証できる」と、ワクワクしている。
コンピューター研究者の伊藤は「宇宙はすべて数学によって計算できるはずだ。そしてそれを解答するのはコンピューターが人類の次に来る知的生命体になることだ。これがこのミッションで証明される」と、進化と文明の旅と期待する。
ロケット研究者の堀内は「未来の人類がいずれこの星にもやってくる。そのときこのウラシマの残骸を見て、宇宙史に残る偉業を思い知るだろう」と夢を見る。
6人の主人のそれぞれの思いと未知への関心の欲望が交錯する中、心の準備を進める。