省吾は紀香と一緒に田中のアパートに行ってみた。
「今度はエアリーを使った方がいいわね」
「そうだな」
田中のアパートを訪ねてみたが、誰も出て来なかった。
「ピンポーン、ピンポーン!! ごめんください。ごめんくださーーい!!」
何度言っても出て来ない。そこへ、隣の住人が出てきて、
「ちょっと何なんですか? その人なら、家賃払えなくて出て行きましたよ」
「あっ、こんにちは。警察の者ですが」
「あの男が、何か悪いことしたんですか?」
「この近くに塾があって、その塾に通っていたそうですが、そのことを知りたいんです」
「その塾なら、塾長がお金が貯まって世界一周旅行へ出るからって、解散しましたよ」
「えっ? 塾長は今海外ですか?」
「そうじゃないんですか?」
「わかりませんが、その話はどなたに聞いたんですか?」
「近所の人とか同じアパートの人が言ってたけど、本当にそうかはわかりませんよ」
「他に知っていることはないですか?」と紀香が言った。
「塾長のことは知らないけど、外国人がいたり、ガラの悪いヤクザみたいな男や水商売風の女もいたりしたけど、あと……これは、噂だけどね」
「何ですか?」
「手形を取って、指紋のつく手袋を作らされた人がいるって、噂だからね。あたしが言ったなんて誰にも言っちゃあダメですよ」
「へーー、あっ、それから、あの、ここのアパートの管理人さんに田中さんが住んでいた部屋の鍵を開けていただきたいんですが」
「管理人さんならそこのうちですよ」
「あっ、ありがとうございました」
二人は管理人に鍵を開けてもらい、部屋の空気をエアリーで読み取った。そして、空気から心の声を読み取り、ドッグの部品に記憶させてセットしてドッグを飛ばした。因みに、田中が言った空気の心の声はこうだった。
《俺はこれからどうやって生きて行ったらいいんだ。パーフェクトがなくなってから金が入ってこない。パーフェクトの手袋に部品貼りつける仕事と粉薬を入れて封をする仕事は給料よかったのに、会社がなくなったらゼロかよ。今までもらった金で過ごすしかないのか》
「パーフェクト」とは塾と会社が一緒になった名前だろう。田中は今どこで何をしているのだろう? 二人はエアリーを見て田中の行方を心配した。もしかしたら自殺でもしているのかもしれないと。
数分後、エアリーを見ると、空を飛んだドッグの画面が現れ、ランプが点滅して、二人はエアリーを持ってそこへ向かった。