【前回の記事を読む】事件の真相へと大きな一歩?近隣住民が聞いた「黒い噂」とは

携帯エアリー

ドッグが止まった場所は、倒産した工場の跡地だった。工場の休憩室には流し台があり、水道も付いていた。扇風機とストーブも置いてあり、田中が生きていくための生活空間は十分だった。

「ごめんくださーい」

「……」

「あのーー、どなたかいらっしゃいますか?」

「……」

紀香も声を出した。

「ごめんくださーい!」

すると、工場の隅に隠れて薄汚い服を着た男がいた。

「あの、警察の者ですが」

「……」

「田中静男さんですか?」

「……」

「そうですよね」

「……」

そこで、紀香がエアリーを取り出して、田中の心の声を聞いた。

《何しに来たんだよ!》

それに答えたのは紀香だった。