【前回の記事を読む】【小説】「携帯エアリー」をきっかけに、美人な同僚と急接近!?

携帯エアリー

「モジ、デンキセイヒン、ケイタイカッタトキ、カキマシタ」

「他は?」

「ウーン、ギンコウ、ユウビンキョク、クヤクショカキマスヨ」

「じゃあ、指紋はどこかでつけたりしませんでしたか?」

「ウーン、ドアノブ、モチモノ、ツクデショウ?」

省吾はアクションで説明しながら質問した。

「なるほど。被害者の、家の椅子に、その指紋がついていたそうですが、その椅子を触った記憶はないですか?」

「イス?」

「こちらです!」

省吾は写真を見せた。

「サー……ワカリマセン。タブン、サワッテナイト、オモイマス、ヨ」

「それでは、この方をご存じないですか?」

省吾は尾藤の写真を見せた。

「アッ! シッテマス! ジュクイッショ……ビトウ……」

「三郎ですか?」

「ソデス!」

「その塾についてお聞きしてもいいですか?」

省吾はやっと事件の入り口に辿り着いた気がした。尾藤とブラジル人、マテウス・メディロンは同じ塾の生徒同士だったのだ。

「その塾ではどんなことを教えてもらったんですか?」

「ペンシュウジ……アッ!」

「ペン習字?」

「ソデス。モジカイタリ、テガタツケタリ、コエダシテ、モジヨミマシタ」

「録音させられましたか?」

「ハイ。スラスラ、ハナシデキルヨウニ、テガミ、ヨミマシタ」

「どんな文でしたか?」

「……イロイロデス」

「殺してやるとか言ってませんでしたか?」

「あっ! うー、ハイ。ドラマミタイデシタ」

「その時のセリフは思い出せませんか?」

「……カネヲサンビャクマンヨウイシロ。ヨウイシナイトブッコロスゾ! デス」

「へーー、そういう言葉ばかり言わされたんですか?」

「イイエ『オハヨウゴザイマス』『コンニチハ』『コンバンハ』モ、アリマシタ」

「それが、段々そういう言葉も言わされたってわけですね」

「ハイ。ビトウモ、イワサレテマシタ」

「じゃあ、その塾に入ったきっかけは?」

「キッカケ?」

「誰に誘われたんですか?」

「オトコノヒト、アパート、キマシタ。ベンキョウオシエテクレテ、オカネ、タクサンモラエルトコアルッテ、イッテマシタ」

「それで、何をやったら沢山のお金をもらえたんですか?」

「ノミモノ、コナイレテ、カキマゼルシゴト、デス」

「あとは?」

「テガミ、カキマシタ」

「遺書ですか?」

「『モウツカレマシタ、サヨウナラ』デス」

「えっ? それが遺書なんですよ」

「……イショ? ワカレノテガミデス」

「わかりました。それで、いくらくらいもらったんですか?」

「うーん、ゴマン、ハチマン……ジュウニマンデス」

「一回で?」

「ソデス」

省吾は他にもいくつか質問をして、塾の場所も教えてもらった。――もしかして、尾藤もマテウスも犯人じゃないかもしれない。誰かに犯人にされたのでは?