省吾はタバコの種類や香水の種類で犯人と被害者の区別はどうつけるのかを考えたが、それより二人の子供の心の声を聞きたかった。そして、子供たちのすぐ近くに寄り、子供たちに向けてエアリーのスイッチをオンにしてみた。
《面倒くさいなあ、早くこの状態から普通の生活が出来る状態に戻してくれないかな?》
《母親が死んだってのに不思議と悲しくないや。通夜とか葬式とか面倒くさそうだな》
そのあと、なぜか
《何を見てるのよ! さっきもビニール袋に携帯入れてたし、それ、ただの携帯じゃないわよね》
はっと思い、正面を見ると赤井がいた。
「な、な、何だよ、黙って近寄ってくるなよな!」
すると、赤井は少し微笑んで、
「ふーーん、いいもの持ってるわね。私にも貸してよ」
「ダメ! お前には貸さない」
「昨日は尾藤と長々と話してたようだけど、あれもその不思議な携帯の影響なの?」
「う、いや、昨日のはまた違うんだ。昨日のはもっと単純な方の……」
「何なの?」
そこで、他の刑事から
「お前ら、何をゴチャゴチャ話してるんだ! そろそろ行くぞ!」
「はい。すみません」
「わかりました」
その日省吾はドッグ付エアリーの操作を習得するため、まっすぐアパートへ帰った。そして説明書を読みながら、持ち帰った空気をどう犯人とつなげるのかを考えてみた。しかし、ビニール袋をむやみに開けてしまうと、空気が漏れて薄くなってしまう。そこで、じっくり何をどう操作して犯人につなげるのかを考えてから少しずつ開けることにした。
しかし、「トゥルルルル……トゥルルルル……」赤井からの電話。
「はい、相田です」
「ごめんね、こんな時間に」
「どうした? 昼間のこと?」
「うん。厚かましいとは思ったんだけど、気になって仕方ないの」
「そうか、俺も自分だけの力じゃちょっと無理っぽいからお前にも知恵を貸してほしいんだ。但し、他の刑事には内緒だよ」
「わかった。今からあなたの部屋に行っていい?」
「えっ? 来てもいいけど……凄い散らかってるぞ!」
「構わないわ。場所教えて!」