【前回の記事を読む】「あなたは犯人ではない」若手刑事が冤罪を確信したワケ
携帯エアリー
「こんばんは」
管理人が奥から出てきた。
「どうだった? 役に立ったかい?」
「はい。大変貴重なことがわかりました」
「そりゃあよかった。今度は犯人がわかる方を買ってみないかい?」
「それは欲しいのは山々ですが、先立つものが……」
「この前、三百万なら買うって言ったじゃないか!」
「三百万なら売ってくださるんですか?」
「そうだな、今日の分はなしでいいよ」
「あっ! ありがとうございます!」
「使い方は説明書があるけど、かなり複雑だよ」
「あの、管理人さんはわかりますか?」
「大体はわかるよ」
「今、簡単に説明していただいていいですか?」
「よし! じゃあ、中開けて少しだけ説明しよう!」
「お願いします!」
そして、中を開け、説明書を開きながら管理人は語り始めた。
「いいか、このボタンは普通の携帯エアリーと同じなんだよ。ボタン一つで人の心の声が文字になって出てくるんだ。心の声を聞きたい人に向けて押すと、その人を中心に、そのエリアにいる人の声が現れるんだ」
「はい。わかります」
「それから、このボタンも私の携帯エアリーと同じ、どうするべきか解説が出てくるんだ」
「そうですか。僕はそれ、使わなかったんですよ」
「そうか。それからこのボタンはね、巻き戻しボタン。空気の巻き戻しをして一時間前、半日前、一日前とか一週間前までさかのぼれる。おおよその巻き戻しだけどね」
「それで何がわかるんですか?」
「臭においや心の声やどんな人間がその部屋に来たのかが推測出来るんだ」
「へぇーー、例えば男か女かとか?」
「そんなもんじゃないよ。タバコを吸う人、人の口臭や体臭で食べた食事までがわかる」
「へーー、今ある臭いの元の臭いがどの程度かが推測出来て、例えてみれば餃子の臭いが薄くなった状態が今の臭いだとすると、その元の臭いがわかるってわけですね。タバコや体臭もあるし、それで、その人の特徴がわかるってわけですか?」