携帯エアリー
そして二時間後、尾藤の筆跡と被害者の遺書の筆跡が一致した知らせが入った。
「俺じゃねえんだよ! なんで俺になるんだよ!!」
「これだけネタが揃ってるんだ! 諦めろ!」
「俺じゃねぇ!! 信じてくれよ!!」
省吾は悲しかった。――もしかしたら、何人も、何十人も、あるいは何百人も冤罪で逮捕されているのか? 警察は思い込みで判断するが、実際には面倒くさいのかもしれない。確実にその人間が罪を犯したのかどうかなど、証明出来ないはずだ。
一つの事件に時間を取っていると次にはいけない。刑事は逮捕してなんぼの世界だ。冤罪であろうとなかろうと、逮捕して、その逮捕された人間は運が悪いと諦めればいいとでも思っているのだろうか?
次の日、省吾は夜七時頃、また例のアパートの管理人のところへ行った。
「こんにちは。すみませーん、この前来た相田ですが、まだ携帯エアリーは売れてないですか?」
管理人は離れた位置にいて私服でゆっくりと奥から出てきた。
「やっぱり来たか!」
「えっ? やっぱりですか?」
「来ると思ったよ。しかし、金はないよな」
「はい。それもわかるんですね」
「そりゃあ、ここに携帯エアリーがあるからわかるさ」
「あっ! それそれ! 何とかならないですかね」
「これは、私が使っているものだよ」
「えっ? この前言ってたものはまた別にあるんですか?」
「そうさ、そっちの方が高性能で、機能がいっぱいついてるからね。刑事にはその方が使い道がありそうだな」