【前回の記事を読む】高性能な「携帯エアリー」追加機能はまさかのドローン!?

携帯エアリー

次の日、また違う殺人事件が起こった。

同じような遺書を残した、自殺に見せかけたと見られる事件だった。一戸建てのリビングで物取りの犯行と思われ、被害者は女性。四十一歳、バツイチで二人の子持ち、松岡直子だ。子供は一姫二太郎、年齢は二十二歳と十九歳だ。省吾は現場の空気を大きめのビニール袋に入れて縛った。

それを見ていた女性刑事赤井紀香が不審に思った。

「何で空気を持ち帰るのよ!」

「ほっとけよ。俺にも考えがあるんだよ」

「ふうん」

省吾は人に見られないように裏に回り、そこで袋の中にエアリーを入れ、文字を読んだ。

《タバコと香水の匂い。パスタ、ミートソース、コーヒー、とんかつ、猫の臭い》

省吾はエアリーの文字を見て、ここに同居している家族の空気を読んでいるのかもしれないと思った。でなければ被害者の空気かもしれない。そこで、二人の子供に質問してみた。

「君たちは昨日の晩は何を食べたの?」

「僕たちは家族三人共とんかつを食べました」

「他には? スパゲティーとか……」

「いいえ。えっと、キャベツの千切りと味噌汁と漬物と……」

「そうか、じゃあ、猫飼ってたりはしない?」

「いいえ。ペットは何も飼ってませんよ」

そこへ、赤井が来て言った。

「何わけのわからないこと言ってんのよ!」

「大事なことさ!」

「タバコは吸うの?」

「二人とも吸いません。母は吸います」

「何ていうタバコかわかる?」

「リークです」

「ありがとう。参考になったよ」