俳句・短歌 短歌 2022.05.02 短歌集「茜色の空」より三首 茜色の空 【第4回】 有波 次郎長 人間の美しさとみにくさ、コロナ禍での生活、忘れられないあの女性……。 ささやかな日常を詠った誠意ある作品、幅広く物事を取り上げ、「今」を鮮烈に詠いあげた短歌集。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 人間は悪魔にだってなれるぞと 示したからには神にだってなれ 憎しみの出所分かれば悪魔には ならずにすむと誰ぞ教えよ 起きてても寝ている時も耳奥で 其処にいるなと誰だ言うのは
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『ネムとジド』 【第2回】 喜田 美樹 「やっぱり、うちじゃ飼えないよ。かわいそうだけど、ねているうちに、すててこよう」 そこで指に乳をつけてさしだすと、ぺろぺろとなめ、そのうちに、皿に頭をぶつけながら、なめだした。なめおわると、いねむりをはじめた。おしりがぬれて、水のようなうんちがでている。指でぬぐうと、母犬になめてもらったように、安心しきってねてしまった。ネムは子犬をだいて、ペチカ(暖炉)のわきの、ワラぶとんをしいた小さなベッドにいって、よこになった。夕方かえってきた、母さんのミレンカは、ネムをみておどろいた。…