俳句・短歌 短歌 2022.08.12 短歌集「茜色の空」より三首 茜色の空 【第17回】 有波 次郎長 人間の美しさとみにくさ、コロナ禍での生活、忘れられないあの女性……。 ささやかな日常を詠った誠意ある作品、幅広く物事を取り上げ、「今」を鮮烈に詠いあげた短歌集。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 包囲され夜中に自転車走らせるコロナが我を追いかけている ウィルスより客の怒号が恐ろしいマスク求むる声荒みゆく 空咳を漏らせばすぐに矢のような眼光飛ばすそら狙撃兵
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『師匠と弟子のワンダーランド』 【第2回】 儀賀 保秀 面倒くさいなあ。普通にこのまま続ける…それが一番楽な気がした。そうしていつも現状維持。そんな矢先―!? 喜之介は、一人暮らしの賃貸マンションに戻ってから、頭の中でその日、自分に起こった出来事を確認していたところだった。そんな中で思考があちこちに迷走してしまっていた。改めて、本筋に軌道修正する。「弟子にしてください!」確かにそう言われたのだ。イケメンだった。この俺に? そう、この俺に……だ。とてもビックリした。 この俺に弟子入りって、何を考えてんねん!懐疑的な気持ちが支配し、自分が誰か分かっているの…