俳句・短歌 短歌 2022.08.12 短歌集「茜色の空」より三首 茜色の空 【第17回】 有波 次郎長 人間の美しさとみにくさ、コロナ禍での生活、忘れられないあの女性……。 ささやかな日常を詠った誠意ある作品、幅広く物事を取り上げ、「今」を鮮烈に詠いあげた短歌集。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 包囲され夜中に自転車走らせるコロナが我を追いかけている ウィルスより客の怒号が恐ろしいマスク求むる声荒みゆく 空咳を漏らせばすぐに矢のような眼光飛ばすそら狙撃兵
小説 『拝啓、母さん父さん[注目連載ピックアップ]』 【第22回】 三上 ミカン 声のするリビングへ行くと、母の不倫相手が...まだ中学生の私を舐めまわすように見る男は、気軽に家に上がり込むように… 【前回の記事を読む】世田谷区に住み、幼稚舎から名門校に通う由緒正しきお嬢様。父親は私立大学の教授、母親は主婦をしながら事業に取り組んでいる。ダイニングチェアの講評会も無事に終わり、ダイニングチェアは学内に展示された。就活で必要なポートフォリオ用の写真撮影をした後、父に発送することを写真付きでラインするとすぐに返事がきた。とても喜んでくれているのが文面から伝わって、父への自分の気持ちがまた分からな…
小説 『月海』 【第2回】 月原 悠 面倒臭そうに体をこちら向きに動かし、「半身麻痺で言葉を発することができません」…本人を目の前に言う看護師を不快に思った。 【前回記事を読む】極寒の地、網走刑務所から出所した。途絶えてしまったあの人からの手紙をたくさんバッグに詰めて、男が向かった先は…近くにはわずかの住民がいたので尋ねると、妙子は近所づきあいがほとんどなく、どうやら約一キロ先の病院に入院したらしい。会えなかったのは残念であったが、すぐさま行くことにした。赤い屋根に白い枠の小窓がいくつもある、古びた二階建ての木造の大きな建物が見えた。ここに妙子が入院し…