【前回の記事を読む】窃盗犯はホテルのスタッフ?渡航先で起きたありえない事件

第三章 渡航先にて

教訓

この盗難事件は、何人かのホテル・スタッフが関わっていると思われます。

まず私のチェック・インの際にカウンターの上に置いたアタッシュ・ケースからパスポートなどを取り出す際、ロビー・スタッフの一人(A)が、それとなく近付いてアタッシュ・ケースのダイヤル番号を盗み見る。それを部屋の清掃担当者(B)に教える。

(B)は、私が朝食に行く際、アタッシュ・ケースを部屋に置いていったことを確認したのち、部屋に入り、アタッシュ・ケースを開け、その中にあった現金のうち、三十パーセントを抜き、封筒をできるだけもとに近いように戻し、ロックし、部屋の清掃、ベッドメイクを手早く済ませて部屋を出る。

その後、(A)と(B)で盗んだ金を山分けする、ということではないか。その際、盗むのは現金のみ、それも全部ではなく二十五~三十パーセントにとどめる。

そのことが盗られた側の発見を遅らせ、自分たちは盗った金をどこかに隠し、通常勤務に戻って時間稼ぎができると推察できます。

考えてみれば、そんな大金を入れたケースを、四十分とはいえ、手元から離したことが油断だったと反省しました。

その後は、どこの国へ行ってもダイヤル番号はアタッシュ・ケース、スーツ・ケースとも毎日変え、また、開錠の際、番号は絶対他人に見られないようにしています。その配慮が効を奏し、以後同様な被害には遭っていません。

この現金盗難事件について、H氏とともにホテルのゼネラル・マネージャーに抗議したのですが、「証拠がないので、申し訳ないが何もできません」とのことでした。

赴任先・その場所でのみ経験できたこと

*ラクダの頭脳は人間並み?

UAE(アラブ首長国連邦)に赴任中のことです。そこでは宿舎と食堂が五百メートルほど離れていたため、朝・晩の食事には歩いて通っていました。

ある日の夕刻、食事を終えて宿舎に向かって裏通りを歩いていたときでした。

曲がり角を曲がって、幅六メートルほどの直線の道に出ると、ちょうど五十メートルほど先の所から若いラクダが単独でこちらに向かって曲がってきました。私は驚いて立ち止まり、様子を窺っていたところ、ラクダも立ち止まってこちらを見ているではありませんか。