全国初の全日制普通科単位制高校 ~新設校の苦労~

歴史の研究会のK会長からの“スカウト”で、同会長が校長を務める高校へ異動することとなった。いわゆる“一本釣り”という人事である。通常、公立学校では、このような人事異動は有り得ないことであった。それは当該校が新設校であり、全国初の普通科単位制高校でもあるという特殊事情もあってか、都教委は、人事に関して当該校の校長に特別な権限を与えていたのだった。

内実を話すと、この人事の件は、数年ほど前から、研究会でK会長に会う度にお声掛けをいただいていた。当時の私の所属校の校長は、こうした半ば強引な人事に対し、異を唱えていたが、最終的には私をその高校へ出さざるを得ない状況になったようである。それはともかく、私は歴史教育の世界で尊敬するK会長のもとで働くことに期待と緊張感をもって赴任した。

ところで、単位制高校とは、学年による教育課程上の区分を設けず、決められた単位を修得すれば卒業が認められるという高校である。昭和63年度から定時制・通信制課程において導入され、平成5年度からは全日制課程においても設置が可能となった。当該校は、このことを受けて、平成8年に全日制の単位制高校として開校した。

単位制の特色は、生徒が自分の学習計画に基づいて、興味・関心等に応じて科目選択できること、そして学年の区分がなく、自分のペースで学習に取り組むことができること、などが挙げられる。

ただし、当該校の場合は、学年制の色合いを限りなく残したものであった。当該校は、単位制のパイオニア校として、他府県からの視察依頼も数多く寄せられ、その対応も毎月のようにあった。そして、学校の骨格があるだけで、具体的なことは何一つ決まっておらず、ゼロから築き上げていかなければならなかった。

加えて、新設校の特別人事による様々な学校からの寄せ集め集団であったため、それぞれの経験則で議論するものだから、物事一つを決めるにも随分と時間を要した。このように草創期の苦労というものは、まさに筆舌に尽くし難いものがあった。