生命が消えて無くなった事が確信出来ていた。祖母の生命は尽きたのだ。それが判るのでナースコールも押さなかった。そして、祖母の死は寿命などではない。私に、祖母の命は奪われた。そんな事をしたのが自分だという事も、時間が経過するにつれ実感できた。祖母が私に受け渡したのでは無く、私が、祖母の命を「吸い取った」のだ。

今、祖母の命を、私は奪った。

昔おばあちゃんが言った「それ」ってもしかして……。

恭子は、恐ろしい一つの回答を導き出した。

もしかして私には、他人の生命を吸い取る能力がある?

おばあちゃんは私の能力を知っていた?

幼い頃私に禁じたその力を、祖母は己の苦しみから逃れるために使わせた?

何故?

どうして!?

何故そんな(ひど)い事をさせたの? おばあちゃん!?

恭子は祖母が死んだ悲しみと同時に、自分の能力に恐怖を覚え、祖母が何故、自分の死を恭子に背負わせるという(むご)い行為に及んだのかという思いで胸が苦しくなった。

それは自然と涙となって現れた。

「おばあちゃん!」

まだ温かさの残る祖母の身体を、慟哭(どうこく)しながら激しく揺さぶった。

この力は何?

何故、この能力を使わせたの?

その答えをまだ貰っていなかった。祖母には恭子の疑問に答える義務があるはずだ。

心肺停止をアラームで知った医師や看護師達が病室に入ってきた。

おばあちゃん! と連呼する恭子を、一人の看護師が引き剥がし、医師が祖母の(かたわ)らに立つ。すぐに医師は祖母の状態を確認し、看護師に指示を与える。

生き返って欲しい。

この恐ろしい力の事を説明して欲しい。

祖母が全てを知っているはずだ。

それが無理な事は恭子が一番よく知っていた。祖母の生命を奪ったのは自分だからだ。それでも看護師に制止されながら、病室の中でおばあちゃん! と連呼していた。

蘇生処置が始まり、電気ショックの衝撃で祖母の身体が跳ね上がる。

病室には、恭子の叫ぶ声が繰り返し響いていた。