句材探し

私は、季語を使用する時、本意を踏まえることにしている。その本意という昔から人々が感じてきた思いを大切にして作句すると、季節感がある句が詠めるように思うからだ。そうして私が作った夏の季語の二句、

季語 夏の蝶(傍題として 揚羽(あげは)(ちょう)

本意 夏の蝶というと、大きく印象的な揚羽蝶、とくに黒揚羽蝶を思い出される。それが夏らしい強さ、激しさをもっているからだ。

作句課程 私は黒揚羽蝶から、大型バイクを思い浮かべた。夏の夜、黒ヘルメット、黒い革ジャンパーのライダーは夏らしい強さ、激しさをもっている。よく見ると、胸が盛り上がった大柄な女だ。ますます、揚羽蝶のイメージだ。

(また)がる大型バイク黒揚羽

季語 蛭蓆(ひるむしろ)(池や沼、水田、小川などに生ずる多年生水草。泥の中に根茎を入れ、水中に茎をのばして葉を水面に浮かべる)

本意 名前は、(ひる)のいそうな所に生える藻という気持である。葉を蛭の居場所と考えるのである。水面の葉が水を覆って一番目につく。

作句課程 歳時記で目にした目新しい季語。例句を見ると、本意に沿って、恐れる、よどみ、病む、死などの語がちりばめられている。私は、池を覆う一面の蛭蓆の下に何が潜むのか想像した。池は山の奥深くのうす暗い池で、不思議な雰囲気。ここには怪しげな物が棲んでいそう。水面に目を凝らしていると、蛭蓆の中から尖った爪が水面から伸び、楕円形の皿が浮いてきた。河童(かっぱ)が棲む池だった。夏の昼の汗ばんだ気だるさ。

蛭蓆おほふや河童()める池