小屋の中の男と女
「…………」
「何とかいいな!」
佐間之助は男に言う。
「は……、すいやせん。あっしが、勝手にやったことで……」
男は、額に汗をかけながら、お品たちに謝ったのだ。
本当だろうか?この佐間之助は何にも知らないのだろうか?麻衣はじっと佐間之助と男を眺めていた。佐間之助は、時々扇子をって自身を仰いでいる。
「そんなら、わたしたちは退散するよ」
麻衣は立ちあがった。
「待て、せっかく来たのだ。お茶ぐらい飲め!」
その時、小女がお茶を持って入ってきた。かぐわしい茶の香りが辺りを漂う。二人は茶を眺めた。どこの茶碗だろうか、金縁で後は緑色が映えている。その湯呑みを麻衣は取った。口につける。甘い匂いがする。普通の茶ではない。
「どうだ、珍しいだろう。外国製だ……」
と佐間之助は、自慢そうに言う。麻衣は立ちあがった。
「話は終わりました、帰ります」
お品も立ち上がった。
「飲んでいかないのかえ?」
佐間之助は、惜しそうに言う。
「いえ、結構です」
麻衣は立ちあがると、凛とした後ろ姿で去って行った。勿論お品も後に続く。
外に出ると、麻衣はお品にささやいた。
「あのお茶、何だか怪しかったわ」
「そうですね……何か眠り薬が入っていそうな……」
とお品も言う。二人は一緒に頷いた。