赤いセーター

母がまだ旅館業をスタートさせる前だったから、私が小学校四年生の時だったのかもしれない。母はその準備に奔走していた。冬休みに入ると、私たち四人兄弟を祖母の家に預けて、郡山に住む母の兄に当たる叔父の所にしばらく滞在したことがあった。

村で親戚のように親しくしていたおじさんが郡山に行く用事ができて、母はそのおじさんのトラックの助手席に乗せてもらい郡山に向かった。

その主な目的は、お金の工面だったそうだが、家族のいる兄に借金の申し出はさぞかし肩身の狭い思いをしたことだろう。でも、当時の私たちは何も知らなかった。我が家にはまだ電話がなく、おじさんの家で電話を借りて連絡を取ってみた。すると、母ははずんだ声で私たちのためにセーターを買い、おじさんに届けてくれるように頼んだからと言った。

「うそ! セーターなんて!」

なんだか夢を見ているようで、私はその日からセーターのことで頭がいっぱいになっていた。いつも姉のお古だったから、どんなセーターが届くのか待ち遠しくて仕方がなかった。

でもおじさんは忙しい人で、待てど暮せど(?)私たちの元にセーターが届くことはなかった。今思うと、せいぜい四~五日だったような気がするのだが……。

そこで三歳年下の妹と取りに行くことに決めたのだ。何日も吹雪の日が続いていたが、三キロの道は通い慣れた通学路だった。風に飛ばされないようにフランネルの布を巻いてあげると、妹は後ろからついてきた。