研修意欲に燃える ~大学・研究会・博物館・読書~

今、こうして振り返ってみると、教員として、この頃が最も充実していたのかもしれない。先に触れた生徒指導に加えて、教科の専門性を高めるための「研修」にも“がむしゃら”に燃えていた。

時間を見つけては、東京大学や早稲田大学などの大学での聴講や、池袋にあった韓国文化院〈注1〉などで催される原始・古代史関係のセミナーなどにも足しげく通っていた。さらに専門性を高めるため、「歴史」の研究会にも積極的に参加していた。

しかし参加者のほとんどが40代以上の大先輩ばかり。行く先々で必ずと言っていいくらいに決まって聞かれることがあった。それは「お若いようですが、御幾つ?」だ。20代の若手教員にとって、早く30代になりたかった自分がいた。そして、年を気にせず堂々と参加したかった。自分にとって、研究会参加の最低基準は30歳以上が相場と勝手に思い込んでいたからだ。

ところで、夏休みや冬休みなどの長期休業ともなると、私は、40、50冊近い書物を乱読していた。そして、机上に読破した書籍をうず高く積み上げては眺めることで満足感に浸っていた。そして、自分の“書斎づくり”にも熱を入れ、読みもしない歴史大辞典、百科事典や美術全集などローンを組んでまで買い揃え、本に囲まれることに至福の喜びを感じていた。

また、その他、芸術分野にも野心的に触手を伸ばし、美術館、博物館巡りを片っ端からこなしていた。さらに歴史教師としての専門性を磨くため、史跡探索を個人で計画したり、歴史ツアーに参加したりと大変意欲的であった。

〈注1〉「韓国文化院」

正式名称は駐日本国大韓民国大使館韓国文化院。日本における韓国文化の総合的な広報を担う韓国政府の機関。機関誌を発行し、講演会や展示会などを定期的に開催し、特に古代から近世に至る日朝関係史のイベントは特筆すべきものがあった。

当時は職場近くの東京・豊島区池袋のサンシャイン60ビル内にあって、無料で著名な学者の講演を聴講することができたため、足しげく通っていた。現在は新宿区四谷の新庁舎へ移転。

(出典:『駐日韓国文化院公式ホームページ』より「韓国文化院」一部参照)