がくとくんは体が大きくて、いつもいばりんぼうだ。
いっしょにブロックで遊んでいても、一こしかない大きな板みたいなやつひとりじめしちゃうし、ドッジボールも強いから「おれがいるチームがいつも勝つんだよね」と言っている。
ドッジボールがとっても上手だし、ダンボールで工作する時にはガムテープを切るのがとっても上手だから、ぼくはがくとくんがかっこいいと思うけど、ちょっといばりんぼうなのは、いやだな。
そんながくとくんが、しょんぼりしている。
がくとくんにも苦手なものがあったんだね。ぼくは牛にゅうが大すきだけどさ。と、ちょっぴりがくとくんに勝った気持ちになった。
「がくとくん、牛にゅう飲んだことないの?」
と先生が聞いた。
「あるよ。お家で飲んでみたんだけど、気持ち悪くて、全部出しちゃった」
とがくとくんが言った。
「そうなんだー、でもね、ようちえんの牛にゅうはとくべつ美味しいんだよ!
だから、がくとくんに飲んでほしいなー」
と先生が言った。
がくとくんの目になみだがたまってきた。がくとくんのなみだなんて、見たことない。よっぽどくやしいんだなぁ。とぼくは思った。
「一口、一口だけ、ちょびっとでいいから飲んでみたら? とくべつ美味しい牛にゅうなんだけどね。みんなでいっしょに飲むともっと美味しいと思うよ」
先生が言った。
がくとくんは目になみだをためながら、ストローを口に近づけようとしていた。
「がんばれ! がんばれ! がくとくん!」
みいちゃんが、はく手をしながら言った。
そしたら、みんなも
「がんばれ! がんばれ! がくとくん!」
と、みいちゃんに合わせて言った。
ぼくも合わせて言った! そら組のみんなでおうえんしたんだよ!
ぼくは、がくとくんにちょっと勝った気持ちでいたけど、でもがんばってほしいと思ったんだ。
がくとくんが、ストローに口を近づけて、ほんのちょっと飲んだ。
「うっ!」
がくとくんがおしぼりで口をふいて、牛にゅうは飲んでないんだなってみんなわかったから、みんなのおうえんが止まってしまった。
みんなちょっとがっかりしていた。
がくとくんはくやしそうにしていた。なみだが出てきちゃっていたよ。