一番になりたい
おれ、じん。
6才、年長、そら組。
せんぷうきとか、しんごうきとか、ふみ切りとか大すきで、ようちえんでも家でも空箱や、セロテープのしんで作っているんだ。
おれは、おれのおじいちゃんみたいに電気工事をする人になって、電気をひつようとするみんなをたすけてあげたいんだ。だから、今からいろいろ作ってみて、研究しているんだ。
苦手なことは早起き。毎朝ママに「じん!早く起きなさい」って、どなられて、ふとんをはがされて、それでも起きなくて、いっつもようちえんに行くのはそら組で1番さいご。
りくとくんは、いつもようちえんに一番に来て、おれが使いたかった空箱で、工作をしてる。
おれだったら、その箱を使って、ぜったいにもっとカッコいいものを作れるのにっていつも思う。
ある日のお帰りの時に、工作コーナーを見るとふみ切りを作るのにぜったいに使いたい箱を見つけた。
ちょっと細長くて、かたくてしっかりとした箱で、しかも2つあった。
明日の朝はぜったいにあの2つをゲットして、ふみ切りを作るんだ。
そう思って、明日の朝は早起きして、一番にようちえんに行くと決めた。
ママに「明日、ぜったいに早く起こしてね」
と言うと
「起こしてるでしょ! 毎日毎日。だけど、じんが起きないんでしょ? もういいかげんにしてよね!」
と言っていた。
そっか。ママは起こしてくれているんだね。おれががんばって起きないと、早くようちえんに行けないんだ!
明日ぜったいにぜったいに早起きして一番にようちえんに行くことを決めた。
いつもは、ふとんに入ってからも、ママの用事が終わるのを待っていて、ママがふとんに入ったら「ねー。絵本読んでよー」とおねがいしていた。
それで、いつもねるのがおそくなって、朝ねむいのかな? と思って、おれ、一人でねた!
本当はねむれないけど、目をつむってねたふりをした。
用事をすませて、ふとんに来たママは
「あら! じんねてるわね! じゃあ、せんたく物もたたんできちゃおう」
と言っているのが聞こえた。
ママは大へんだな。おれが一人でねむれば、ママはもっといろいろお仕事出来るんだな。と思いながら、ねたふりしたままねてしまった。
「じん! 朝だよ!」
とママに起こされた。
「うん! 起きたよ!」
と。自分でもびっくりするくらい気持ちよく起きた! ママが
「じん、昨日は一人で早くねてくれたもんね。ママたすかったよ。じんがねているのを見て、せんたく物たたんでからねたから、ママもゆっくりねむれたよ!」
と言った。
いつもより時間があるからと、ママが朝からホットケーキをやいてくれて、おれはうれしかった。丸くて、ふかふかであったかくて。シロップがしみこんでてさ、ママがフォークでおさえてナイフで切ったら、シロップが「じゅわ〜」って出てきてさ。美味しかったなぁ。