おっぱいなんてだいきらい
おれ、りくと。6才。年長そら組。
大すきなのはかめんライダーとせんたいヒーロー。かっこいいものだけが大すき。車、電車、ひこうき大すき。
同じ「そら組」の女の子はみんなおれのこと「かっこいい」って言うよ。女の子にやさしいし、かっこよくしているからなぁ。
モテモテで、みんなから「りくとくんはだれとけっこんするのー?」と聞かれる。
だけど、おれは「まだ1人にえらべないからー」と言っているよ。
だけどね、だけど、本当はママがこの世で一番大すきで、ママとけっこんするつもりなんだ。ねる時はかならずママといっしょで、ママのおっぱいさわってねているんだ。
ママのおっぱいはふわふわしてて、気持ちよくて。どんなにねむくなくても、さわっているうちにねちゃうんだよな。ふしぎだな。
「こらー! りくと! それはおなかのお肉だから!」って、おっぱいとまちがえておなかのお肉をさわっておこられることもあるけどね。かっこいいと思われているおれがママのこと大すきで、しかもおっぱいさわらないとねむれないなんてはずかしいからぜったいに言えないんだよな。
ある日、同じそら組のこうちゃんが「おっぱい」と大きな声で言った。
女の子は「やだー! こうちゃんおっぱいすきなの?」「気持ち悪いー」って。
こうちゃんはさいしょわらっていたけど、ちょっとこまっていた。
みーちゃんが「りくとくんは、おっぱいすき?」と聞いてきた。
おれは「おっぱいなんて好きなわけないじゃん。赤ちゃんじゃねーし」と言った。
みーちゃんは「そうだよねー。りくとくんはそうだよねー」と、「よかった」って顔でおれを見た。
「みんなどうしたの?」先生がやってきた。
みーちゃんが、先生にせつめいしていた。
「こうちゃんがおっぱいって大きな声で言ったの。キモいよね。こうちゃん。りくとくんはおっぱいすきじゃないんだって!」と、さいごにおれのことを言っていた。