アイドル乙姫の誕生
夏の昼下がり6人が第3回目のORIONS会議を行なった。
当初堀内が考えた宇宙船は太陽系内宇宙を航行できる程度のものであったが、乙姫が加わるにつれ、太陽系外の探険に行ける第3宇宙速度を超える性能を持つことになった。
宇宙船の頭脳は乙姫、船体名は竹取村の海岸に毎年6月になると産卵に来る海亀と地元に伝わる浦島伝説にちなんで「ウラシマ」と、命名された。
太陽圏以外の天体への飛行も夢ではなくなったウラシマ、そして人間性を備えた乙姫の誕生は宇宙への道がものすごく現実を帯びたものになってきたのである。
宇宙船ウラシマの本体の建造や組み立てには、そのほとんどがロボットでできることを乙姫が立案した。宇宙船の中の構造も決まり、何千年に亘る生命の連鎖方式もでき上がった。
星野が「どうせ宇宙に行くなら僕の星で恋人でもある、アルタカ星にある第3惑星AL―3に出かけよう」と譲らない。
堀内が
「織田さんの全快祝いの会でORIONS計画のときに言っていた星ですね」
「その星、どこにあるかまだ星野さんより詳しく聞いたことがないけど」
「皆さんも知っている、オリオン座の左隣に3つの大きな星があります」
「オリオン座なら知っています。3つの大きな星が輝いていますね」
「その中にクガニタチ星(黄金の2つ星)と昔から言われている右側にアルタカ星があります」
「そんな詳しいことは知らないな。それを知っている人は天文学者だけでしょ。私もあなたが言われてからいろいろ調べたのですが、市販されている本にも、インターネットの検索にも載っていませんでしたよ」
と、織田が口をはさむが星野はお構いなしに話を続ける。
「そのアルタカ星の第3惑星AL─3です。僕が発見した星です」
皆は僕が発見したというところだけやけに記憶に残った。