「この星は僕の研究からすれば人間が移住できると思うんです。ですから、この地球の生物である植物の種子や動物の遺伝子を持ち込んで第2の地球を誕生させることができると思うんです」
皆は星野の熱意を聞いてはいるが、とてもそんなことができるとは思わず冷めた表情である。
「星野さん、以前聞いたことがあるかもしれませんが、その星まではどれくらいの距離があるのでしたかね?」
と、堀内が問いただした。
「1万光年です」
「え……、光の速度で1万年もかかるのですか、そんなのとても行けませんよ」
と、本多が驚きの声をあげる。
部屋の雰囲気がますますしらけていると、下を向いて何やら考えていた中本が、
「生物学の観点からすると1万年でも行けますよ。以前もお話ししたかと思いますが、今私が開発しているiPS細胞を何回も再生すれば、肉体的にはほぼ無限に近くクローン人間を再生できます」
堀内が「そうですか、今制作を検討している宇宙船なら光の速度の60%ほどのスピードが出ます。1万光年の距離なら2万年で到達できますね」と、確信を込めて発言した。
織田が
「10年とか20年ぐらいのことなら理解できますが2万年ですか、人類の2万年前と言えばマンモスがまだ闊歩していた時代ですよね」
……。
「人間の寿命から言えば2万年もの遥かな時間ですが、宇宙時間から見ればたった2万年です」
「永遠の命と光速宇宙船ですか、ロマンですね。成功するかどうかより、やってみたくなりましたね。ORIONS作戦を続行しましょう」
織田はますますやる気でいる。織田は、この話をORITA研究所の職員に話をしたら、とても正気の沙汰ではないし「所長、皆さんにだまされているのではないのですか?」と、言われる始末である。