ブチルスコポラミン錠とドンペリドン錠が併用される場合がある

これも実際にあった併用処方例で、痙攣性の腹痛にブチルスコポラミン、嘔吐症状にドンペリドンが処方されたのですが、疑義照会しても継続となっている例です。明らかに真逆な作用なのと、添付文書では一方の減量または中止となっているので、初回処方時には疑義照会の対象ですし、主治医がそれでもGoと言うならば、継続して患者をフォローする必要があります。

1.ブチルスコポラミン

消化管に存在するアセチルコリン受容体上で、副交感神経系神経伝達物質アセチルコリンと拮抗する薬です。いわゆる抗コリン薬で、消化管運動亢進状態を抑制して消化管が痙攣した際に発する腹痛状態に効果を示します。抗コリン薬の代表的な薬剤にアトロピンがありますが、ブチルスコポラミンの方が腹部臓器の壁内神経節により選択的に作用するといわれています。

2.ドンペリドン

消化管神経叢に存在するドパミンD2受容体を拮抗的に阻害する薬剤になります。ドパミンがドパミンD2受容体を刺激すると腸管へのアセチルコリンの遊離を抑制します。アセチルコリンが減少すると、消化管運動が抑制され悪心や嘔吐の症状が出てきます。

ドンペリドンはドパミンD2受容体を遮断してドパミンの作用を抑制し、アセチルコリン量を増やして消化管運動を活発化させ悪心や嘔吐を改善します。

別の薬ですが、メトクロプラミドも同様に消化管神経叢ドパミンD2受容体を遮断して悪心・嘔吐を抑制します。

さらにメトクロプラミドはセロトニン受容体(5-HT4)を刺激して腸管運動を亢進したり、中枢性のセロトニン受容体(5-HT3)に拮抗して抗嘔吐作用もあります。