次元の違う世界に到達した人達の偉業を讃え留まることなき飛翔を見守ろう
世の中の「次元の違う世界に住む人達」には、どうやら、3つ程共通点があるようだ。
それは、
(1)素質
(2)環境
そして
(3)努力 の3つだと思われる。
この3項目のうち、どれか一つが欠けても「次元を超えた存在」にはなれない。実際に、例を取って、この仮説の妥当性を試してみよう。
対象とするのは、羽生結弦、錦織圭、そして上原ひろみの3人だ。簡単に説明すると、次のようになる。
羽生は、男子フィギュアスケートで、史上初の300点超えを記録し「次元が違う」という音場を定着させた立役者だ。彼の演技は、今までの誰とも違う。身体のどこかに蓄えているエネルギーを爆発させて跳ぶのではない。身体全体のしなやかさが、ジャンプする瞬間に、全身から必要なエネルギーを凝縮することを可能にするのだ。「しなやかで美しい……」これが羽生の演出する陶酔の空間だ。
錦織は、男子テニスの世界ランキング5~6位をコンスタントに保持し続けていた。日本人の体格を考えると「奇跡的な」プレーヤーである。錦織は、フロリダのNick Bollettieri Tennis Academy(NBTA)に入学したのが、飛躍の契機になった。現在卒業生47名を数えるこのNBTAからは、男子選手だけ挙げてみても、アガシ、ベッカー、クーリエ、ハース、ミルヌイ、サンプラスなど、綺羅星の如く名選手が並んでいる。
恐らく、この「テニス梁山泊」で、合理的な練習を膨大な回数繰り返し、自分のプレーに絶対的な自信、即ち、負けるどころか、凡ミスをするなど考えだにしないという平常心で淡々とプレーをしているのだと推測する。
最後に上原だが、バークリー音楽院を首席で卒業し、全米デビュー後13年にして、2016年には、遂にビルボードジャズ部門の1位に輝いた「天才」ジャズピアニストであり、今も毎年1枚アルバムを出し、アフリカ以外の世界5大陸を、毎年ツアーで精力的に回っている。
聞くところによると、上原は幼少期からヤマハで教育を受け、14歳で出場した発表会では、既にプロ顔負けのジャズピアノを弾いていたという。更に驚いたことには、渡米前に技術的な目標は達成してしまい、バークリーには、主に作曲を学びに行ったというから恐れ入る。
その演奏は、圧巻だ。正確無比な技巧と多彩な表現力に圧倒されながら聴き入っていると、いつか身体は震え出し、気が付くと、熱いものが頬を伝っている。そういう経験を、私は何度も味わった。