女子サッカーの魅力に目覚めた人達よスタジアムに足を運ぼう。今や女子は男子より遥かに質の高いサッカーをしている
2019年元旦の皇后杯決勝は、実に見応えのある試合だった。日テレベレーザとINAC神戸のマッチアップ。日本の女子サッカーをリードしてきた好敵手同士の戦いは、男子を含めたこれからの日本サッカーの向かうべき方向性を明確に示してくれた。そこには、澤穂希も宮間あやもいなかった。しかし、傑出した個人がいなくても、実に質の高いサッカーが、目の前で繰り広げられた。
ピタリと止まるトラップ、速いグラウンダーのパス、少ないタッチ数、少ないファウル、少ないスローイン……。これらが連動した波状攻撃を可能にし、躍動感と驚きとスリルに満ちたゲームに繋がった。結果こそ、ベレーザが4─2で勝ったが、点差ほど実力に開きはなく、あっという間に90分が過ぎた。
比べてみると、ラグビーでは「余らせる」即ち数的優位を作らないと、トライを取れない。"One for All, All for One(一人は皆のため、皆は一人のため)"と言われる所以だ。チーム戦術を全員が完全に理解し、それを達成するために、自分の役割を果たすことが求められる。例え、一人だけ猪突猛進しても、2人目のサポートが遅ければ孤立してしまい、ボールを奪われてしまう。
これに対し、サッカーの戦術は柔軟かつ多彩だ。最終的にゴールキーパーが取れない場所にボールを運べば、そこまでの過程に決まりはない。ラグビーが、各ポジションに求められる役割を果たせるか、という視点で選手を選ぶのに対し、サッカーでは、今在籍している選手の個性を生かす形でチーム戦術が作られる。
そこで重要なのが、選手の個性と限界をどう見極めるかだ。世界に目を転じてみると、欧州や南米の強豪国と比べ、日本人はどうしても体格的に劣る。体格的に勝る相手をどう崩していくか。それは、やはり「各局面で数的優位を作る」しかないと思う。数的優位の極致が無人のゴールにボールを流し込むことだが、これを頭の片隅に置きつつ、リスタートからビルドアップしていかなければならない。
数的優位を作るにはどうすれば良いか。それは、相手をだますことだ。相手の読みの裏を掻くことである。これは、時間・空間の2局面で、相手が対応できない状況を作り出すことを意味する。具体的には、相手の予想と違うタイミングでボールを動かすこと、そして、相手が対応できないエリアにボールを運ぶことである。
これを実行するには、どのようなスキルが必要か。凡百に聞こえるが、それは「確実に止め、正確に蹴る」ことである。簡単なようで、これが実に難しい。国際試合ともなれば、フリーでボールを受けられる局面など殆どない。相手が近くからチャレンジしてくる、若しくは既に背中にしょっている状態で、身体のバランスを保ち、的確にトラップし、正確なパス、できればシュートまで持って行かなければならない。