堀内のロケット打ち上げ構想
従来のロケットの打ち上げではまず発射場が必要になり、ロケットそのものにもコストがかかる。飛行機の背中に乗って飛び立って高高度からロケットエンジンでシャトルを宇宙に射出する方法なら、飛行許可だけ取れば宇宙に出発できるし、帰りも高高度で宇宙から帰還した宇宙シャトルを飛行機で受け取れば貨物用の飛行機として一般の飛行場に着陸できる。
堀内の宇宙往復帰還飛行船の構想が固まった。地上からの発進は、コンコルドのエンジンを改良した4発エンジンを搭載した両翼幅が120メートルある飛行機で、機体は薄い双胴船のドッグのようになっており、胴体部分に宇宙帰還船シャトルが丁度はまり込むように作る。飛行機のキャリアプレーンである。高高度を高速で飛ぶこのプレーン型飛行機から宇宙シャトルを分離して宇宙に飛び出そうというものである。
この宇宙シャトルのエンジンは、宇宙船完成後にはその外洋宇宙船にそっくりはめ込んで船外活動できる小型船や緊急脱出ボートとしても利用でき、宇宙船のメインエンジンに代用するもので、全部で8基のシャトルを丸ごと宇宙船に合体する予定である。宇宙船の建造には10基のシャトルを作る必要がある。8基は宇宙船のメインエンジンとなり、あとの2機は予備として緊急脱出用や惑星着陸用に搭載する計画とした。
宇宙船の製作のほとんどはロボットが行なうので、このシャトルは資材を地上から宇宙に運ぶ運搬船の役割を担うことになる。
宇宙船の本体が完成すると、このシャトルは本体と合体してその広い貨物室が酸素と水素の燃料タンク室として使われる。
堀内は、エンジンの開発と並行して宇宙船の開発も行なわなくてはならない。コンピューターの研究をしている伊藤に、自分の基本構想を設計図に落とし込んでくれるコンピューターの開発を依頼していた。堀内は
「伊藤さん、宇宙船の基本設計は作ったのですが、詳細設計は私1人ではとても書くことができません。四国の田舎に設計士を何百人も集めて図面を1枚1枚作ることはとてもできないことです。伊藤さんが開発したコンピューターに詳細設計を引かせることはできないでしょうか」
と相談した。伊藤は「まだ完成の段階ではありませんが、やらせてみましょう」
と軽く答えた。伊藤には確証はなかったが、何となくやれるのではないかと感じるものがあった。堀内が
「この前本多先生と仮面ライダーのようなものを被って実験したやつですか」
「そうそう、その仮面ライダーのコンピューターです」