俳句・短歌 句集 2022.02.09 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第49回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 花辛夷崖つぷちまで畝立てる 代掻きの泥黒光りしてはねる 濁流にアカシアの花よく揺るる
小説 『曽我兄弟より熱を込めて』 【最終回】 坂口 螢火 用意した死に装束を、我が子に着せる。まだこんなに小さいのに、斬首だなんて…私が身代わりになって死にたい! 青天の霹靂とは、まさにこのこと。聞いた母の驚きは尋常のものではない。「エ――エッ! 何と、何とおっしゃいます!」声さえ別人のごとく裏返って、「厭です! 厭です! 渡しません、断じて……」絶望的な悲鳴を上げ、曽我太郎に取りすがって泣きわめいた。その母の絶叫に驚いて、一萬と箱王が「母上! いかがなさいました」と座敷に駆け込んでくる。「オオ――一萬、箱王」母は無我夢中で二人を左右にかき抱くと、黒髪を振…
小説 『眠れる森の復讐鬼』 【第45回】 春山 大樹 あいつらが同じ病院にいると聞いた瞬間、「もう終わりよ」と半狂乱で泣く彼女…その時初めて、彼女が何をされたのか知ってしまった。 【前回の記事を読む】「それからが地獄だった。毎晩彼女の夢を見た。彼女が振り返って俺に向かってにこっと笑う。そうすると彼女の全身が炎に――」俺は高校を卒業して東京の私立大学の医学部に通うことになって、週末しか梨杏に会えなくなったが、その間も父親にこの治療法を続けさせた。医師免許を取った後は、勿論今城病院での研修を希望した。俺は晴れて梨杏の主治医になったわけだ。梨杏も経子さんも心から喜んでくれた。そ…