俳句・短歌 句集 2022.02.09 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第49回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 花辛夷崖つぷちまで畝立てる 代掻きの泥黒光りしてはねる 濁流にアカシアの花よく揺るる
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『薔薇のしるべ』 【第2回】 最賀茂 真 青いシャドーに真紅のルージュをひいた友人。二十年ぶりの再会に嬉しいはずが… 踏み出そうとした足が泳いだ。視界が揺れ、階段が本当にそこに続いているのか、一瞬不確かになり典子は思わず手摺をつかんだ。下までの残りは僅か数段だったが、途方もない段差に感じた。苔色のはしるレンガの階段を見つめ、典子は大きく息を吸った。―そうだわ、無理もないわ、マリがあんな表情を見せるのも、大学の二年で別れてしまってから二十年ぶりになるのだもの。それにこんな所で、こんな格好をしているのだもの。マリが…