そうやって約20年間走り続けたのですが、ふとした時に「医師の仕事以外にも何かやってみたい!」と思うようになったのです。そこから政界を目指し、5期20年もの長きにわたって富山県小矢部市の市長を務めさせていただくことができました。
市長を引退した時には、市長としての20年間の活動が認められて旭日中綬章という名誉ある勲章を賜ることができましたし、引退してからは好きなゴルフに熱中したり、縄文時代の高床住居を建ててみたりと好きなことをやって過ごしてきました。自分で言うのもなんですが、なかなか豊かで数奇な人生だったと思います。
そんな私もそろそろ、自分の死とか魂といったことについて考える年齢になりました。髪はもちろん眉毛などにも白いものが目立つようになり、鏡を見る度に「年をとったな……」と痛感します。当然のことながら物覚えも悪くなっていますし、妄想が混ざったり、時間や場所があやふやになったりすることも。思い込みや勘違いで怒り出してしまうこともあるので、脳もかなり老化しているのだなぁと残念に感じます。
確かに老いると不自由なことも増えていきます。とはいえ、私は決して不老不死を望んでいるわけではありません。そりゃあまだまだやりたいことはたくさんありますが、万が一永遠の命なんてものを手に入れてもボケてしまっては意味がありません。ボケなかったとしても、あっという間にやるべきこともやりたいこともなくなって、毎日が退屈で仕方なくなることでしょう。
戦後の焼け野原から世界一の経済大国へと昇り詰めた日本を生き抜き、病院の経営者として成功し、政治家としても結果を残すことができた私は、自分の人生にそれなりに満足しています。満足しているからこそ、いつ死んでも悔いはないと言えるでしょう。